安倍総理の“一斉休校”に現場の悲鳴 学童保育が“クルーズ船化”するリスク

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ミニ小学校が続々開校

「私自身は保育所に勤めていますが、5歳の息子を幼稚園に通わせています。そして、その幼稚園(文科省管轄)は小中高にならって休園になりました」

 とした上で、兵庫県で暮らす女性保育士がぼやく。

「つまり、どうにかして息子の面倒を自分たちで見なければならないのに、職場である保育所は休めない。しかも、幼稚園より保育所のほうが預かり時間が長く、感染リスクは高い。感染リスクの低い幼稚園の息子を休ませて、自分は感染リスクの高い保育所で他のお子さんのお世話をする……。何か変じゃないですか?」

 国際医療福祉大学の和田耕治教授(公衆衛生学)は、全国一斉休校をこう評する。

「新型コロナウイルスの感染は、今後も数カ月ではなく年単位で続く可能性があります。したがって、北海道が緊急事態宣言をしたように、いずれ他の地域でも緊急事態宣言をしなければならないことが考えられます。しかし今回、全国一斉に休校にしてしまったため、ある地域でいよいよ緊急事態宣言を出さざるを得ず、本当に休校が必要となった時に、再び休校という『切り札』は出しにくくなりました。『今さえ乗り切れば』という雰囲気があるようですが、そう単純な話ではないのです」

 このような批判に慌てたのであろう。安倍総理の一斉休校要請の翌日、萩生田光一文科相が総理に代わり、

「(休校の)時期や期間は柔軟に判断してほしい」

 と、軌道修正したが、

「総理が休校要請したら従わざるを得ない。その直後に柔軟にって言われても……。私たちはマシンじゃない」(先の公立中の先生)

 結局、この萩生田発言は「後手感」を増しただけで、現場の混乱に火に油を注ぐ結果となったのだった。

 付け焼刃の感が否めない「自称先手」の一斉休校策。それを最も象徴するのが、放課後に児童を預かる学童保育(放課後児童クラブ)を巡る迷走であろう。

 先に触れたように政府は一斉休校を要請しておきながら保育所の休所は見送ったが、学童保育に関しても「原則開所」を求めたのだ。

 集団感染のリスクから小学校を休校にしておきつつ、学童保育での集団生活はどうぞご自由にという時点で場当たり的施策に思えてならない。それどころか、休校期間中は夏休みなどと同じく学童保育の開所時間を普段より長くし、さらに、これまで学童保育に通っていない児童も受け入れることになったのである。

 結果、学童保育の職員の人手が足りなくなるだろうからと、小学校の先生が学童保育を手伝えることになった。多数の児童が1カ所に集まり、そこに先生も加わる。これはもはや、「ある意味では」ミニ小学校である。小学校休校に伴い、ミニ小学校が続々開校中……。「泥縄」施策がもたらした、笑うに笑えないブラックジョークだ。

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