安倍総理の“一斉休校”に現場の悲鳴 学童保育が“クルーズ船化”するリスク

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 指導力を演出したい――。しかし、それは本来、自らアピールするものではなく、その振る舞いから自然と滲(にじ)み出てくるものである。安倍晋三総理の「一斉休校要請」で浮き彫りとなったのは、トップの剛腕ではなく、彼の独善がもたらしたドタバタの悲喜劇だった。

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 2月25日、菅義偉官房長官は、新型コロナウイルスの政府対応について訊(き)かれるとこう言った。

「ある意味では先手先手」

 一方から見ればそう捉えることもできると逃げた格好で自信のなさが窺えるが、このふわふわとした言葉遣いを裏返して「翻訳」すると、こういうことになろう。

「他方、ある意味では後手後手に映るかもしれない」

 我々は今、新型コロナウイルスと、軸が定まらずにバタバタとする政府に翻弄されている――。

 先の菅発言の2日後、安倍総理は「切り札」を出した。

 全国の小中高などへの一斉休校要請。

  大胆な手段に打って出た理由を、安倍総理は、

「先手先手でやるべきだと判断した」

 と、菅氏と同じ言葉を遣って説明した。だが、元厚労省医系技官で医師の木村盛世氏はこう断じる。

「一斉休校は言わば水際対策のひとつです。武漢からチャーター便で邦人を帰国させていた頃にやるべきであって、市中感染が広がっている現在、意味があるとは思えない。後手後手の対応と言わざるを得ません」

 安倍総理にしてみれば、「後手批判」が高まっていたなか、自らのリーダーシップによる英断で先手をアピールしたかったのだろうが、それが裏目に出た形だ。英断と愚断は紙一重。後悔先に立たず、悔恨に「先手」なし。

 兎(と)にも角(かく)にも、一斉休校要請により教育現場は大混乱に陥った。

「安倍総理が、3月2日の月曜日からの一斉休校を要請したのが、その前週の木曜日。事実上、猶予は金曜日の平日1日しかなく、その間に全ての準備を済ませるなんて無茶です」

 と、千葉県内のある公立小学校の校長が愚痴る。

「児童に全ての荷物を持って帰ってもらうことができるか、休校中の宿題プリントをどうやって用意すればいいのか。対応に追われました。卒業式だけは、来賓などを断り、卒業生と親御さんだけでやろうと考えていますが、まだ卒業証書の受け取り方や返事の仕方などは練習させられていなかった。ですから、金曜日に慌てて1時間ほど練習し、あとは家でやっておいてという状況です」

 前代未聞の「卒業式の自主練」が課せられたわけだが、別の公立中学校の先生もこうこぼす。

「幸い期末テストは終わっていましたが、通知表は渡せておらず、各戸を家庭訪問して渡すことになるかもしれません。通知表は究極の個人情報だとかで、郵送しにくいらしいんです」

 さらに、なにより問題なのは休校によって日中、行き場のなくなった子どもたちを誰がどう見守るかだ。とりわけ共働きの世帯にとっては深刻である。こうした保護者からのクレームを恐れてか、政府は最も手がかかる時期の幼児を預かる保育所(厚労省管轄)の休所は要請しなかった。ところが、これが新たな混乱を生むことになる。

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