大迫傑、記録樹立を支えた「2億円」ナイキと「500円」アプリ

スポーツ

  • ブックマーク

 事実上の五輪代表決定戦で圧倒的な輝きを放った大迫傑(すぐる)選手(28)。2度の日本記録樹立で褒賞金「2億円」を“稼いだ”わけだが、その走りを支えたナイキ製の厚底シューズに注目が集まっている。それとはまた別に、「500円」にも……。

 ***

 大迫選手が履いたのは「エアズームアルファフライネクスト%」という最新モデル。その一つ前のモデルが「ズームXヴェイパーフライネクスト%」だ。スポーツ紙デスク曰く、

「17位までの全員がどちらかを履いていました。上位30位を見ても28人が使用。今回もナイキ一色でした」

 スポーツジャーナリストの増田明美さんは、厚底を試したことがあるという。

「平坦なグラウンドがまるで下り坂のようでした。厚底の特徴であるカーボンプレートが、着地時にバネのようにしなって推進力が生まれる。履きこなせれば、大きな武器になりますよ」

 むろん、選手によって“合う、合わない”はある。

「私なんかは踵(かかと)で着地する“ザ・昭和”の走り方です。踵着地だと体重移動はスムーズにいくものの、厚底のクッション性や反発力が十分に生かされません。それを生かす走法は、つま先で着地する“フォアフット”や中央部で着地する“ミッドフット”です。大迫選手の走り方はフォアフットからミドルフットの中間ぐらいなので、とても厚底に向いていますね」

多くのことを犠牲に

 一方で、厚底には次のようなリスクもある。

「フォアフットはアフリカのトップランナーに多く、スピードが最も上がる反面、脚にかかる負担も大きい。骨格や筋肉のつき方が違う日本人には難しい走法なのです。厚底シューズはその走法の状態を“作り出す”わけですから、よほど慣れていないと、レースで足をつったり、地面の凹凸やカーブで怪我する可能性があるんです」(先のデスク)

 これらのリスクを乗り越えて努力を重ねた結果、2億円を手にした大迫選手。レース直後に涙を見せたが、

「会見で理由を問われた大迫選手は、“プライベートなことなので内緒にします”としか語りませんでしたが、実は、昨年末からはじめた自身のアプリで理由を語っているんです」(同)

 そのアプリは月500円也。さっそく覗いてみると、

〈やっぱり(昨年の)MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が終わって、全部向かい風に感じて。たとえばシューズのことであったり、(MGCで)3番に入ったのにまだ半年戦わないといけないの、という思いであったり〉

 どんな些細なことでも逆風に感じられたと繰り返し、

〈それを乗り越えてきたり、2カ月間、家族から離れてやった部分であったりとか。多くのことを犠牲にして(合宿で)ケニアに行ったので、そのへんがワーッとこみ上げてきたのかな〉

 と、本音を洩らしている。寡黙でふてぶてしい印象のある会見とはうって変わって饒舌だ。2億円をもたらした厚底シューズへの風当たりもプレッシャーだったとは、意外である。この「500円アプリ」は、日本最速男にとって精神的な充足を得るための武器なのだろう。

週刊新潮 2020年3月12日号掲載

ワイド特集「我勝てり」より

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。