清野菜名、福地桃子、富田望生、若手実力派女優たちの無駄使いが見てられない!

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 若いうちにいろいろな役をやったほうがいいと思う。思うが、実力や持ち味を発揮できぬまま埋もれていくようなドラマに出るのはもったいない。「若手女優の無駄使い」をまとめてみた。

「やすらぎの郷」に続き、「やすらぎの刻~道」にほぼ通年登場し、昭和編の貧しい山村ではモンペ穿かされ薙刀ふるい、平成編では純朴な娘、大御所にずーっと拉致られていた清野菜名が現代にやっと戻ってきた、と思ったら、パンダかよ!

「シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。」は日テレが大好きな「若者が説教垂れる」系ドラマだ。「いや、誰が見ても気づくでしょ!」というパンダコスプレの非現実味、女性が催眠状態で操られるという設定の不穏さ、警察さえも翻弄する都合のよさに中年はついていけず。そもそもパンダじゃなくてよくね? 清野と横浜流星のアクションは垂涎(すいぜん)だが、設定が机上の空論っぽくてな。でも若者に人気があるらしい。老兵は去るよ。健闘を祈る。

 治療薬が見当たらないほどの無駄なハイテンションでダダ滑りするのが父親譲りの岡田結実(ゆい)主演「女子高生の無駄づかい」。漫画なら面白いのかもしれないが、実写にすると、この上なくキツイ。キャラクターを強調しすぎて上滑りしている感が否めず。その中で、「もったいない」と思うのは中村ゆりかと福地桃子だ。

 中村は通称ロボ。賢くて優秀だが感情表現ゼロの女子高生。私の中では「第二の山口紗弥加」「ポスト山口紗弥加」と認定しとる中村がまさかの無表情とは。まさに女子高生に無駄使い!

 福地は通称ヤマイ。脳内は常にファンタジーの中二病という激痛の設定だ。朝ドラ「なつぞら」で主役をうっかり超える演技力で話題になった福地が次にどんな姿を見せるかと期待してたら、こんなところで! 妄想の世界に生きる女子高生役は確かに演技力が必要だ。でも福地はうますぎて、賢く見える。別の意味が出ちゃう気がして。こんなところで才能切り売りしてる場合じゃない。他へ行って。

 コメディの名手、教頭役を演じる大倉孝二も、岡田の上滑りに感染して目も当てられない惨状。女子大生好きの担任教師役・町田啓太は……ま、これはこれで。

 今どきの女子高生はよく知らんが、全体的に「コレじゃない感」が蔓延しとる。

 そして最ももったいないのが富田望生(みう)。確かな演技力と才能に心奪われっぱなしの若手女優だが、なぜ?

「ブスの瞳に恋してる2019 The Voice」はもう今の時代に合わない。ブスやデブといった侮蔑的な濁音言葉で煽る「濁点ビジネス」は過去の遺物。主語が男側にあるのも時代遅れ。よほどの内容がない限り厳しいし、内容がないモノに名女優が引きずり込まれる不憫さったら。

 富田の実力はNetflixドラマ「宇宙(そら)を駆けるよだか」のような作品で発揮されるべき。これ、清原果耶も超絶名演。若手女優ふたりの才能を余すところなく引き出す秀作だった。「若いからってナメんなよ」と若手女優に代わって、叫びたい衝動に駆られとる。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2020年3月12日号掲載

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