最大のミステリー「マレーシア航空370便」行方不明事件から6年 根強い中国陰謀説

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その後の調査では…

 とはいえ、その後も「機長のジハード説」が根強いのは、先にアボット元豪首相が語っていた通り。18年5月には、マレーシア政府とともに2年間の調査の指揮を執ったマーティン・ドーラン氏ら専門家が、やはり豪メディアに「航空史上最大のミステリーの失踪事件は、『機長が乗員乗客を道連れに心中した大量殺人事件だった』」と明かしている。飛行時間1万8000時間以上のベテラン操縦士だったザハリ機長は、自宅にボーイング777のフライトシミュレータ―を所有していて、「そこには、インド洋への飛行航路をテスト飛行するシミュレーションが残されていた」ともマレーシア捜査当局は明らかにしている。

 さらに、MH370便と同じボーイング777型機に詳しい著名なパイロット、サイモン・ハーディ氏は「制御不能で墜落した」とする豪運輸安全局の見解を否定して、次のように述べてもいる。

「その人物(ザハリ機長)は最後の最後まで飛行機を操縦し、文明から可能な限り、離れた場所に航空機を隠すことが目的だった。おそらく、(墜落地点は)これまで捜索されてきた場所よりもかなり離れたところだろう」

 MH370便が、7時間30分ものあいだ飛行を続けていたのは先に述べた通り。その間、不信に思う乗客がいなかったのか、何らかの形で地上とコンタクトをとろうとした者はいなかったのか、疑問に思われる方がいるかもしれない。これについてもサイモン氏ほか複数の専門家が「答え」を見つけていて、なんとザハリ機長は離陸して間もなく、客室を減圧し、全員を窒息死させた、というのだ。その後、機長はアンワル氏の処遇をめぐり、7時間半かけてマレーシア政府と燃料ぎりぎりまで交渉を続けていたとも言われている。仮に交渉に失敗しても、この事件が後世に語り継がれることになれば、当時のナジブ独裁政権が歴史に残る……というわけだ。

 これが仮にも事実であれば、マレーシア政府は事件の真相を知っていながら、隠ぺいしていることになる。そんな政府がどんな見解かといえば、公式には事故説を推しているようだ。

 18年7月末、国が主導する19人の国際調査チームの手による、400ページを超える膨大な報告書が公表された。ここでは「第三者によって進路が変更された可能性はない」と結論づけ、機体やブラックボックスが発見されなければ解明は難しく「原因は特定できない」とまとめられている。「犯行声明を発表した組織、さらには身代金要求等が一切行われなかった」とテロの疑惑も否定。そして事件の最大の関心事であるザハリ機長の事件への関与についても、「パイロットによって引き起こされたものではない」というのだ。

 6年が経った今も、この航空史上最大のミステリーには関心が高い。米CIAやロスチャイルドの関与など、さまざまな陰謀説などが飛びかっている。では、自国のナショナルフラッグ(自国旗を掲げた航空会社)が引き起こし、中国に次ぐ多くの犠牲者を出したマレーシアの国民やメディアでは、どんな説が有力なものとして語られているのか。ずばり「中国による陰謀説」だ。

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