最大のミステリー「マレーシア航空370便」行方不明事件から6年 根強い中国陰謀説
「航空史上最大のミステリー」とされる、マレーシア航空機行方不明事件の発生から3月8日で丸6年が経った。現在までに諸説語られてきた事件の“今”を、東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏がレポートする。
***
「Good night, Malaysian three seven zero(おやすみなさい。マレーシアン370)」
この言葉を最後に地上との交信を絶ち、乗客乗員239人を乗せたマレーシア航空MH370便は、忽然と姿を消した。まずはその不可解な“足取り”を振りかえろう。
中国・北京行きの同便がクアランプール国際空港を発ったのは、2014年3月8日0時41分(日本時間午前1時41分)のことだった。乗員乗客の出身地は、台湾や香港を含めた15の国と地域。うちの3分の2に相当する152人が中国人だった。
まず離陸後、午前1時7分から37分までの間に、航空機の位置情報やエンジンデータを自動送信するACARS(エーカーズ)という通信装置の送信が途絶えた。これと前後する1時19分、冒頭の「おやすみ」を残し、MH370便と地上管制との交信も途絶える。その2分後には、航空機の場所や便名などを自動で知らせる「トランスポンダ」という装置も切られた。
その間、機体は南シナ海上空で左へと急旋回。予定航路とは真逆の南インド洋方面、つまり南西に向かった。その間、マレーシア空軍のレーダーは、奇妙な飛行コースをゆく同機を確認してはいた。が、捉えきれなくなり、消息は完全に途絶えることになる。
通信機器の異常など、機上で何かトラブルが発生すれば、パイロットは別の装置や衛星電話を用いて対応する。が、その痕跡はなかった。事件から1週間後、マレーシアのナジブ首相(当時)は「意図的に通信装置が切られた」と会見で明らかにしている。
またマレーシア当局によると、MH370便は、7時間30分ほどにわたって、まるでレーダーの追跡をかいくぐるかのように、ジグザグの飛行線を描くように飛行していたと見られる(これは、マレーシアから北京までの飛行時間とほぼ同じの時間である)。
消えたMH370便の捜索には、日本やオーストラリアなど含め計20カ国以上が参加し、南シナ海やインド洋などで大捜査線が展開された。しかし、同機のものとみられる残骸は発見されたものの、事件解明につながる確たる手がかりは全くつかめず、17年1月に捜索は打ち切られた。捜索費用は約2億ドル(約200億円)で、捜査範囲は約4万6000平方マイル(約12万平方キロメートル)。航空史上最大規模の捜索が行われたミステリーは、事実上、迷宮入りしたのである。
[1/4ページ]