業績低迷の「鳥貴族」と「串カツ田中」が回復の兆し “師弟関係”に異変あり

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新業態で新しい立地開拓と仕組みづくりを行う

 現在展開している沖縄県内の店は4店舗ですべて直営。中城店以降は、泉崎店、大謝名店とロードサイドの路面で展開してきたが、浦添のショッピングセンターのフードコート内「パルコシティ店」が特に好調のようで、2019年11月11日に更新した田野氏のブログによると「パルコ店は客数でフードコートテナント第1位、人件費も25%切っている」という。

 このブログでは「鳥玉を県内外のフードコートを中心にFC展開をしていきたいと思います。フードコートなら勝てます。県外にフードコートのつてがありませんので誰か紹介してください」と田野氏は述べていた。

 1号店を開発した当時の原価率が26%で、最近の人件費率が25%となると飲食店経営の基本的な数値であるFLコスト(原価と人件費を足した数字の売上対比)が標準60%に対して10%近く低いものとなる。実に収益性の高い業態である。

「串カツ田中」の展開は都内の住宅街より始まり、大きなターミナルに進出、昨年3月には前橋に初のファミリーレストラン型ロードサイド店舗を出店するなど、さまざまな出店立地を開拓してきているが、「鳥玉」のフードコートでの繁盛ぶりと生産性の高い数字をみて串カツ田中HDのグループ店舗として傘下に収める価値があると考えたのだろう。

 串カツ田中HDでは3月16日の予定で「鳥玉」の事業会社であるセカンドアロー(本社/東京都品川区、代表/大須賀伸博)を設立し、「鳥玉」の運営とFC事業を行う。海外進出も視野に入れたブランド開発や、厨房機器や調理機器の開発やオペレーションに関わるシステムの開発も行って「飲食店の新しい店舗展開を計画している」(広報資料より)という。

 この新しい事業会社の代表に就任する大須賀伸博氏は、串カツ田中HDが新しい試みを行う時に、常に第一線にいた人物である。今回新しい事業会社の代表をなることは同社のキャリアプランを豊かなものにしていくことであろう。

アメリカ・海外に市場を求める「鳥貴族」

「鳥貴族」では2024年7月期までの中期経営計画の中に「海外市場への進出」を掲げている。現在着々と進行していて2022年7月期にはアメリカ・ロサンゼルスに出店するとのこと。ロサンゼルスにはアジア系のコミュニティが多く、日本の焼き鳥は受け入れられやすいと判断した。アメリカでも現状の屋号や、均一価格は維持する。食材は現地で調達する。さらに長期ビジョンとして国内・海外で「鳥貴族2000店舗以上」、チェーン年商1800億円を目指している。

 串カツ田中HDは「串カツ田中」の長期目標として「全国1000店舗」を目指している。新しいブランドとして加わる「鳥玉」とはシナジー効果を生み出す策をめぐらし、そのノウハウによってM&Aを行っていくのではないか。

「鳥貴族」は既存店のリフレッシュと体制強化に努め、そのノウハウを持って海外に市場を求める。「串カツ田中」は串カツ田中HDの事業の柱に位置付けられてポートフォリオを豊かにしていく。苦境を乗り越えた両者は次のステージが定まっている。

千葉哲幸(フードサービス・ジャーナリスト)
ライバル誌である柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』両方の編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴三十数年。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年3月10日掲載

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