角川歴彦(KADOKAWA取締役会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】
読み手が書き手に
佐藤 そうした文化的な出版を含めて、いま、かなりの点数の本を出していますよね。
角川 年間5千点を出すようにしています。
佐藤 5千点を新刊で、ですか。
角川 そうです。これはもう4~5年続けていますね。
佐藤 紙の本ですか。
角川 そうです。売れる本を出せと言っていると、どんどん点数が減っていくんです。けれども5千点出せと言うと、編集者は出すことに意味があると考えるようになり、さまざまな本が出るようになります。文芸のセクションだと、年に800点くらい出ていますね。
佐藤 そんなに書き手がいますか。
角川 5千点のうち千点くらいが、本を読むけれども自分でも本を作りたい人たちの本、つまりはUGC(User Generated Contents=受容者が作るコンテンツ)です。
佐藤 主に小説ですか。
角川 ライトノベルという分野がありますね。小学館や集英社、講談社がコミックを開拓してきたように、ライトノベルはKADOKAWAが開拓しました。初めは皆さん、これは何の本だろうと思ったはずですが、いまは各社が取り組むようになっている。まあ、従来の仕組みの中で本のデザインだけアニメっぽくして、ライトノベルと言っているところもあります。ただ、もうそういう段階は終わって、別の次元になっている。
佐藤 どういうことですか。
角川 「小説家になろう」というサイトがあって、そこにライトノベルなどの膨大な投稿があるんです。そうしたところから、読み手だった人が書き手になっている。
佐藤 それは面白いですね。
角川 グーテンベルクが印刷術を発明する前、例えば、古代ギリシャ時代に本は写本しかありませんでした。だから読み手は書き手だった。それが時代が下るにつれ、書き手と読み手に分かれていきますが、いまデジタルによって、再び読み手が書き手になる時代がやってきた。だから出版社としては、IT技術を使って読み手が書き手になるような環境を作らないと生き残れないと思うんですよ。
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