「安倍が新型肺炎に罹ればいい」 文在寅“医学参謀”の品性なき発言のウラ
文在寅(ムン・ジェイン)大統領の医療分野の参謀が「安倍晋三首相が新型肺炎に罹ればよい」と述べた。弾劾の危機に直面する左派政権のあがきだ。発言を韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く。
日本が隠ぺい工作
鈴置:韓国の国民健康保険公団の金容益(キム・ヨンイク)理事長が3月3日、左派の政治家が主宰するYouTubeチャネルに出演し、「今日の日本の国会で安倍が答弁しながら咳をかなりしていたらしい」と振られ、以下のように答えました。
・それもいいですね。その方(かた)がちょっと(新型肺炎に)罹れば(日本の患者数の隠ぺい工作が)変わるのではないか。
聯合ニュースの「金容益『日本が五輪控え新型肺炎を隠ぺい…あまりに政治的な判断』」(3月3日、韓国語版)や、中央日報の「『日本、新型肺炎を隠蔽…韓国よりもより感染者数多い可能性』 韓国の国民健康保険公団理事長が発言」(3月4日、日本語版)が報じています。
金容益理事長はソウル大学で予防医学の博士号を取得し、韓国の保険行政学会会長を務めるなど、医療行政の専門家です。
ソウル大学・医療管理学研究所の所長を歴任後には、左派政党の国会議員も務めました。文在寅大統領の医療に関する参謀陣の大御所と報じられています。
安倍は東京五輪に配慮
――医学者がなぜ、隣国の首相の病気を望むのでしょうか。
鈴置:韓国では、特に政権側の人々は「日本政府は新型肺炎の感染者数数を抑えるために、敢えて積極的に検査をしないのだ」と言い出しています。金容益理事長の「安倍は病気に罹れ」発言も、その文脈の中で語られたのです。
聯合ニュースの「金容益『日本が五輪控え新型肺炎を隠ぺい…あまりに政治的な判断』」(3月3日、韓国語版)の発言部分を翻訳します。
・(日本の感染者数は)韓国よりも格段に多い可能性が高いが、極めて政治的判断を下している。夏に(東京)五輪があるので診断しようとはしないのだ。
・平素なら日本も(感染症を)積極的に管理する国だが、今回は捕捉しようと考えない。五輪という政治的な動員があるためだし、新型肺炎は我が国の人が考えるよりも相当に弱い病気だからだ。
・診断しなければただの風邪で終わる。重症になれば肺炎の治療をすれば済む。日本も老人が多いので死ぬ人は死ぬ――という態度なのであろう。これが本当に良い政治なのであろうか。
・安倍晋三総理の作戦が成功し、隠ぺいが成功すればよいが、(感染が)爆発すればどうするのか、と考えるのだが。暴発しても診断しなければ捕捉できないわけで……。
以上のような発言の後に、「安倍が新型肺炎に罹ればよい」――つまり、病気に罹って死ぬか退陣すれば、隠ぺい工作が止んで日本もまともになる、との趣旨の発言が展開されたのです。
医療崩壊に陥った韓国
――何を根拠に隠ぺい工作と決めつけるのでしょうか?
鈴置:根拠は何もありません。韓国では議論は事実に基づかなくてもいいのです。自分に有利になるよう、適当に事実をねつ造するのが常道です。
――「自分が有利」になるのですか?
鈴置:文在寅政権は新型肺炎で窮地に立ちました。保守派は「中国全土からの入国を禁止しなかったため感染が韓国で拡大した」と主張、大統領の弾劾に動いています(「新型肺炎で『文在寅』弾劾 “習近平に忖度するな、中国からの入国を全面禁止せよ”と保守」参照)。
文在寅政権は国内の防疫戦術の選択にも失敗しました。軽症者も陰圧室の完備した病院に入院させた。その結果、病院が軽症者で埋まってしまい、重症の患者が自宅で待機するうちに死亡するケースが急増したのです。一種の医療崩壊です。
朝鮮日報の医学専門記者であるキム・チョルチュン氏らが「患者は20倍多いというのに…MERS規定に縛られた政府の対応」(3月2日、韓国語版)で以下のように指摘しています。
・(こうした失敗は)2015年に発生し186人が感染したMERS(中東呼吸器症候群)の規定にこだわった政府の防疫対策が原因だとの指摘が出ている。
・致死率は高いが感染力は弱いMERSへの対処方法を、MERSとは正反対の致死率は低いが感染力が強く、患者数が(3月1日時点で)4000人近い武漢肺炎(新型肺炎)への対処に機械的に適用したのだ。
韓国政府は3月1日に方針変更を表明、生活治療センターを設置し、軽症患者を病院から移し始めました。
ただ、死亡者は増え続け、3月9日0時時点で51人にのぼります。日本の7人と比べれば明らかに多い。後に検証した際「方針転換が遅かった」との批判が起きると思われます。
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