カン・ハンナが日本で見つけた飲食店 美味しいNIPPON

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 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第30回は、カン・ハンナさん。今回は「京家 KARASUMA」に伺いました!!

 一つだけ残されている焼き餃子 ここは日本の奥ゆかしい夜

 とある一夜の些細な出来事に、日韓の文化の微妙な差異をくみ取った短歌。これを詠んだのは、韓国出身のタレント、カン・ハンナさんだ。

 日本に来て丸8年が過ぎた彼女は、芸能活動の傍ら、瑞々しくも鋭い感性で、心の細やかな揺れを短歌に綴っている。「短歌界の芥川賞」とされる角川短歌賞で2016年から3年連続入選。昨年末には、初の歌集『まだまだです』を上梓した。

 ぐつぐつと煮え始めた「黒毛和牛ホルモンの京風味噌なべ」を前に、出来上がりを今か今かと待ちわびる才女は、

「この店は日本に来た時の初心を忘れないために来るんです」

 どういうことか。

「来日した時、日本で叶えたい夢が沢山ありました。ですが、長いこと日本に暮らすと、外国にいるという感覚が希薄になって、居心地が良くなり、現状に満足してしまう。そこで、和食を食べ、自分が今日本にいることを改めて感じられて、来日時のピュアな気持ちを思い起こすんです」

「京家 KARASUMA」は目黒川のほど近くにあり、京都から仕入れた食材やお酒を楽しむことができる和食店。日本の友人と6年前に来店して以来、たびたび訪れている。

「私は、日本の地方に連綿と紡がれてきた文化がすごく好きで。もちろん、この京料理みたいに、季節感や素材の味を生かした食文化も大好きです!」

 日々の些事や短歌は韓国語ではなく日本語で思考するという。それは、子供のように日本を丸ごと受け入れたいとの想いからだ。

「毎日が日韓の違いの発見で面白いです。特に興味深いのは日本の謙遜文化ですね。褒められた際、韓国だと『ありがとうございます』と答えるのが普通ですが、マネージャーさんから、日本だと、『私なんてまだまだです』と謙遜した方が良いと教えられたんです。それである時に、その言葉をイベントで話したら、スゴイ受けが良くて(笑)。今はその言葉の深い意味を理解し、歌集のタイトルにしました」

 お鍋は出来上がりましたが、カンさんの興味深いお話は“まだまだ”続きそうです。

週刊新潮 2020年3月5日号掲載

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