アイヌ協会長がサケ“密漁” 「和人の許可は要らぬ」の波紋

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残りはお裾分け

 今年1月、麻生太郎財務相が“(日本は)一つの民族”と発言、批判が殺到したのは記憶に新しい。昨年にはアイヌ民族を先住民族と明記したアイヌ新法が成立したばかりだった。

 畠山会長に真意を聞くため自宅を訪ねると、2月に脳梗塞で倒れ入院中だという。代わって会長の“同胞”を名乗る知人に尋ねると、

「畠山さんはコタン(集落)を仕切っていた首長の血筋。漁業を営んでいて、3年前までは漁師をしていました。75歳で奥さんに社長を譲り、漁師を引退したのです」

 以前から申請せずに漁をしようとして揉めていたが、強行したのは事実上、昨年が初めてだった。知人が続ける。

「自由にサケ漁を行っていたのに、明治時代に和人が一方的に禁じ、権利を奪った。それは和人の罪だと。そもそも許諾を得るのがおかしいと、法を犯してでも主張しようとしたのです」

 儀式に必要なサケは2匹。ほかのサケはどうしたのか。

「儀式の後、自身の漁業会社の倉庫で同胞らとお酒を飲んで、サケ料理を食べました。残りは参列者に振る舞い、お裾分けです」(同)

 地元の漁業組合員はこう苦言を呈す。

「畠山さんの親族は本人に“許可とらなきゃダメだべさ”と言ったけど、頑固なところがあってさ。網でごっそりとって“権利だから”はないんでないの。書類送検なんて自業自得だべ」

 畠山会長の心情は分からぬでもないが、ルールはルール。許可さえとれば問題ないのだから、本当の密漁行為と区別するためにも今後はぜひ法律を遵守して、アイヌの伝統儀式を未来につないでもらいたいものだ。

週刊新潮 2020年3月5日号掲載

ワイド特集「地図なき旅行者」より

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