日弁連、公明党、朝日新聞が反対…「少年法」18歳引き下げはこうして潰された

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原理主義者

 いかにもカンリョー的な了見だが、こうした姿勢の犠牲者とも言えるのが、少年犯罪の被害者たちだ。

「加害者の名も明らかにならず、処分も甘い。これまで私たちは時代にそぐわない法律によって苦しい思いをしてきました」

 と言うのは、「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さん。武さんは、24年前、長男を「少年」に殺害された。

「適用年齢を下げれば、こうした被害者の思いは少しでも緩和されることになるのではないでしょうか。まだまだ被害者の現状はわかっていただけません。反対派の皆さんは毎回のように“少年院での教育は優れている”と言うばかり……。遺族はみな、謝罪をしてほしい、お金を払ってほしいと思っているわけではありません。罪を犯したらそれ相応の処分を受けて、しっかりと償ってほしいと思っているだけです。どうしたところで息子の命は戻ってこない。でも、少しでも被害者が理不尽な思いをしなくて済むように、現状を知った上で考えてほしいと思っていたのですが……」

(1)で取り上げた事件で息子を失った、澤田美代子さんも言う。

「引き下げに反対をする人たちは、加害者の立ち直りのことばかり考えて被害者への配慮はしてくれません。考えているのは、少年が罪を犯した後のことばかりです。また、少年への教育が優れている、と言いますが、果たしてそうでしょうか。息子を殺した『少年』も、事件の前に無銭飲食で逮捕され、保護観察になっています。この時、保護観察官や保護司がもっと連携していたら、息子は殺されずに済んだのではないかと今でも思うのです」

 少年法の厳罰化でなく、適正化を、と2人は声を揃えて訴える。

 これらの声は届くのか。改めて「反対派」に聞くと、まず朝日新聞は、

「紙面で示している通りです」

 とそっけないお答え。

 公明党は大要、

「少年法は有効に機能している。推知報道の禁止、不定期刑の適用などは今後の検討課題」

 と回答。

 日弁連の担当者も、

「少年法は罪を犯した少年の更生に役立っており、有効に機能しています。重大事件については原則、検察に送られるなど、被害者の権利についてもバランスが取れるよう改正されてきていて、被害者団体の中にも年齢引き下げに反対する方もいらっしゃるのです。実名報道は、変わらず20歳未満は禁止すべきです。18~19歳はこれから進学、就職していく時期にあり、実名が出ると、それが困難になる可能性が高い。不定期刑についてもいろいろな評価がありますが、しばらくの間は続けていくべきでしょう」

 と、徹頭徹尾、加害者視点、被害者軽視の姿勢がにじみ出るような回答に終始するのである。

「反対派の中心には、とにかく少年法には少しでも手を付けてはいけないと考える原理主義者がいる。テコでも動きません」

 と言うのは前出のジャーナリストである。

「今回の見送りで、改正はいつの日になるのか。不謹慎な話ですが、次の機会は、また凄惨な少年事件が起き、世論が沸騰した時となってしまうのでしょうか……」

「大人」を巡る認識は確実に変わりつつあるのに、時が止まったかのように動かない「少年法」の矛盾。

 この耐え難い不条理が正されるまでに、あとどれくらい、少年の犠牲となる人々の血が流れるのだろうか。

週刊新潮 2020年2月27日号掲載

特集「投票権はあるのに罪を犯しても保護 『少年法』18歳引き下げはこうして潰された」より

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