日弁連、公明党、朝日新聞が反対…「少年法」18歳引き下げはこうして潰された

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「少年法」18歳引き下げはこうして潰された(2/2)

 公職選挙法が改正され、2016年から18歳で選挙の投票ができるように。民法も改正されて2022年から18歳が「成人」となる。ところが、「少年法」適用年齢は20歳未満のまま。議論されてきた18歳未満への引き下げは、日弁連、公明党、朝日新聞らの“ノー”によって、法改正案の提出は見送られることになった。

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「私も彼らがかたくなに反対する理由がまったくわかりません」

 と、言うのは、中央大学の藤本哲也・名誉教授(犯罪学)。藤本氏によれば、そもそも少年法が20歳未満を対象としたことには、ある背景があるのだという。

「1922年、大正時代に成立した『旧少年法』では、18歳未満が『少年』と定められていました。しかし、戦後の1948年、新たに公布された昭和の少年法では適用年齢を20歳未満に引き上げたのです。この改正はGHQの影響下で行われました。アメリカは当時、『国親思想』、つまり、親の保護が不十分な少年は、国が代わりとなって面倒を見るべきだ、との考えに基づく『保護主義』を採っており、これに大きな影響を受けました。しかし、その当のアメリカは少年犯罪の凶悪化を受け、既に大半の州が18歳以上を成人として扱うようになった。一方、日本は70年以上もそのままなのです」

 世界各国の制度を見ると、日本の特異さはさらに浮き彫りになる。

「調査可能な世界186カ国のうち、87%が18歳以上を成人と定め、刑事法上も成人として扱われています。日本のように、刑事法の上で20歳以上を成年として扱う国はもう10カ国程度、といったところでしょう。世界の趨勢から完全に取り残されているのです。年齢を引き下げた上で、若年層の軽微な罪については、新たに更生に必要な制度を設ける。これがあるべき姿だと思います」(同)

 そもそも現在の少年法による処遇は、諸手を挙げて称讃されるようなものなのか。

 例えば日弁連は、

〇少年院を出院した少年が2年以内に少年院に戻ったり、刑事施設に入ったりする率=11・9%

〇成人が刑事施設を出た後再び入所する率=18・6%

 との数字を比べた上で、これをもって、「少年手続は再犯防止に結果を出している」との見解を示すが、

「そもそも少年院は、保護処分が下された比較的軽い犯罪を起こした少年を対象としている。刑務所に入所する者と比べて、再犯率が低くなるのは当然です」(藤本名誉教授)

 これでは恣意的な解釈と言われても仕方ない。

「今回、引き下げが見送りになってしまったのには、反対派の強硬な姿勢もありますが……」

 と言うのは、少年法に詳しいジャーナリストだ。

「他方で、賛成派が腰砕けになってしまった、という背景もあります。議論の発端を作ったのは自民党でしたが、先頭を切った稲田朋美さんは考えを変えてしまったのか、この件についてほとんど発言をしなくなった。また、他の積極派の議員も落選して姿を消し、自民党内で熱心にこの件に取り組む議員がいなくなってしまったのです」

 そして法務省も足並みが揃わなくなったという。

「少年院や少年鑑別所は、18~19歳時点での入所者が3割強を占めるのです。もし少年法の適用年齢が引き下げられ、その年代が入所しなくなると、相当数の施設が合併や閉鎖を余儀なくされる。少年院や少年鑑別所は、法務省の下にある組織ですから、法務官僚にとって、自らのテリトリーが侵される結果になってしまうのです。これについて拒否反応が働く人もいました」(同)

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