【新型コロナ】韓国の感染源、新興宗教「新天地」はかなりヤバい 信者がわざとウイルスを広める?
既存のプロテスタント教会に信者が潜入、時には乗っ取りも
「新天地」は、韓国でよく見られるキリスト教系の新興宗教の1つだ。正式名は「新天地イエス教・証しの幕屋聖殿(証拠帳幕聖殿)」。現在88歳の教祖・李萬熙(イ・マニ)が、1984年に設立した。教団名の由来は、「ヨハネの黙示録」中の「新しい天と新しい地」。李萬熙を新約聖書が予言した「再誕のイエス」と崇めており、プロテスタント教会、カトリック教会の双方から異端と見なされている。
だが、その影響力は大きい。信者数は韓国国内の約21万2000人に加え、海外約3万3000人。これに前述の「教育生」約6万5000人が加わる。韓国国内では大邱広域市を含む各都市に、12の支派と60の支教会を展開。さらに布教の拠点となる宣教センターは306カ所に上る。プロテスタント968万人、仏教762万人、カトリック389万人という韓国の宗教人口(2015年)を考えると、有数の規模を持つ教団といえるだろう。
韓国のプロテスタント教会は、特に「新天地」を危険視している。「新天地」の布教者は正体を隠して既存のプロテスタント教会に潜り込み、その教えに問題があるかのように信者らを言いくるめるなどして、自分たちの教会へ誘い出すからだ。狙った教会の副牧師にまで上りつめ、教会ごと乗っ取る例もある。こうして「新天地」が勢いを増すにつれ、プロテスタント教会では入り口に「『新天地』信者立ち入り禁止」のポスターを貼り出すようにまでなった。
ほかにも「偽装教会」や聖書勉強会を名乗るスペース「福音部屋」など、「新天地」であることを隠して信者を誘い込む拠点が約740カ所に及ぶという。このように秘密裏に信者を獲得しようとする布教体質は、感染経路の追跡を困難にする要因にもなった。感染が確定した信者に立ち寄り先などを尋ねても、正直に答えないからだ。2月26日にも、感染確定者の「新天地」信者が立ち寄り先を偽っていたことが防犯カメラの映像から明らかになった事例が報じられていた。
「『新天地』は感染確定者の巣窟だ」
韓国国内で最初に新型肺炎の感染確定者が出たのは1月20日。その後1カ月ほどは、おおむね平均1日1人程度のペースで緩やかに推移していた。それが一気に拡大したのは、2月18日に61歳の「新天地」信者が31番目の患者となった後だ。この信者が所属する大邱広域市の教会、また教祖・李萬熙の兄が入院後に死亡した慶尚北道の病院を中心に、連日大量の感染確定者が発生。2月26日には、一気に感染確定者数が1000人を超えた。
法務部が2月29日に公表したところでは、昨年7月以降に中国・武漢から韓国へ入国した「新天地」信者が42人に上るという。「新天地」は武漢でも布教活動を行っており、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は同月26日、武漢の信者数が約200人と伝えた。こうした武漢での布教活動、そして閉鎖的な布教のネットワークが、韓国での感染の震源地となった最大の要因のようだ。
中央災害安全対策本部の長を兼任する丁世均(チョン・セギュン)国務総理は26日、「(新型肺炎問題は)当初は患者が急増することもなく、適切に管理すればいいと考えていた。だが『新天地』問題が浮上し、国民全体が懸念する事態に発展した」と発言。また朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長は25日、「『新天地』は感染確定者の巣窟だ」と強い調子で批判した。
ネットコミュニティでは、「新天地」信者を名乗る人物の書き込みが物議を醸している。「ほかの教会の礼拝に行ってコロナウイルスを広めてやる」「疑われる症状がある人は、自分に続け」というのがその主な内容だ。ほかの教団に感染を広めることで非難の矛先をかわすのが目的とされているが、「新天地」側は虚偽の投稿だとして法的対応を示唆している。
だがこうした書き込みに信憑性を持たせているのは、「新天地」の教義だ。信者らは信仰を通じて不死の肉体を手に入れられると信じており、新型肺炎に罹患することもさほど恐れていない、と伝えられている。
25日の信者リスト提出とその徹底調査により、新たな局面を迎えた「新天地」問題。これを封じ込めのターニングポイントとできるのかどうか、韓国政府は慎重な見極めを迫られている。
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