「少年法18歳引き下げ」は見送りに 投票権はあるのに罪を犯しても保護される不条理

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デッドライン越え

 それらを検討すべく、法務省はまず省内に「勉強会」を設置。そして、2017年には、「法制審議会」に少年法の引き下げの是非を諮問し、以来、24回にも亘って会議が行われ、具体的な改正案や、その修正案も2案提示された。

 再来年に迫る成年年齢引き下げに間に合わせるのならば、周知期間を考えると、この通常国会で「少年法」の改正を成立させるのがデッドライン。

 ところが、

「反対意見が噴出し、提出は見送りになってしまいました。声が大きかったのは、まず日弁連です。彼らは何度もシンポジウムを開いて訴え、公明党にも“説明”を行った。『人権の党』を謳う公明党もこれに乗り、“ノー”を表明したんです。同じ連立を組む与党の一角がダメと言う以上、自民党も押し通すことは出来なかった。他方、メディア界でこれをアシストしたのが朝日新聞。社説やインタビュー記事で“反対”の主張を繰り返し掲載し、機運を作った」(同)

 政治、司法、メディア、それぞれのキープレーヤーが手を組んで反対し、改正は見送りになったのである。

 彼らは何を守りたかったのか。

 前出の法務省関係者が解説するには、

「18~19歳はまだ人間として未成熟で、成長過程にあるので成人と同じ手続は取るべきでない、というのです。彼らが何より声高に訴えたのは、現行の少年法が有効に機能している、ということです。少年犯罪の件数や発生数は共に減少している。そして、少年法による手続は、刑事手続より教育効果が優れている、と主張しました」

 すなわち、18~19歳の「保護」を何よりも重視すべし、と論陣を張ったのだ。

「なぜ、彼らは『少年の更生』を過剰なばかりに重視するのでしょうか」

 と憤るのは、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人・弁護士である。

「そもそも更生の機会は年齢に関係なく、50代でも60代でも、すべての受刑者に対して与えられるべきです。18歳以上が大人と決まったのですから、その年齢から刑事処分を科すことを前提にし、その上で更生の可能性がより高いとされる、若年成人に関しては、教育の機会を更に多く与えればよいのです」

 そもそも、

「大人として権利が認められるのであれば、その責任も負わなければいけません。大人の基準は、医学、精神医学、社会的コンセンサスを勘案してひとつに決まる。そして、今の日本ではそれが『18歳』と決まった。であれば、なぜ刑事上では、成熟していない年齢となるのか。まったく理解できません。大人の概念が変わった。だから、刑事上も18~19歳は大人として扱うのが当然。反対派はこの簡単な理屈がわかっていないのです」(同)

(2)へつづく

週刊新潮 2020年2月27日号掲載

特集「投票権はあるのに罪を犯しても保護 『少年法』18歳引き下げはこうして潰された」より

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