「いきなり!ステーキ」は2年連続赤字で窮地 業績回復のヒントは“ワタミ方式”
拡大路線は破綻?
諺に「悪名は無名に勝る」とは言う。しかしながら、「いきなり!ステーキ」の現状は、どうなのだろうか。
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「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスは2月14日、2019年12月期決算を発表した。純損益は27億円の赤字、2年連続の赤字だった。
当然ながら多くのメディアが報じたが、朝日新聞デジタルの「いきなり!ステーキ、2年連続赤字 店同士で客奪い合う」(2月14日・配信)は、理由を次のように解説している。
《売上高の8割を占める「いきなり!」は、13年の初出店から約490店まで急速に出店を伸ばしたが、近隣の店舗同士で客の奪い合いが起きたという。このため春までに44店を閉店する方針で、店舗の減損として27億円を計上した》
「いきなり!ステーキ」で、自社店舗の競合が問題になっていたのは事実だ。とはいえ、拡大路線の失敗は今に始まった話ではない。
デイリー新潮では18年12月、「『いきなり!ステーキ』が全国展開完了も、“もう成長は頭打ち”と言われる理由」との記事を配信した。
この頃、「いきステ」は絶好調だった。運営するペッパーフードサービスは18年9月、日本外食チェーンとして初めてアメリカのナスダックに上場を果たした。11月には秋田市に363店舗目の「いきステ」を出店し、全都道府県への展開を成し遂げた。
ところが外食産業の専門家は、もう“危機の予兆”を感じ取っていたのだ。
この年の3月には売上が落ち込み、5月には東京証券取引所で株価が下がり始めた。更に同じ月にはステーキの値上げを断行したが、これで退潮が鮮明になってしまった。
デイリー新潮の記事では「外食産業を取材する記者」が、「いきステ」で夕食をとった感想を明かしている。
《「300グラムのリブロースステーキと、ハッピーアワーで半額の260円になっていた赤のグラスワインを2杯。会計は消費税を入れて3000円を超えました。リブロースは当初1グラム5.5円、かつては300グラムが税別で1650円、今は1グラム6・9円で2070円です。率直に言って、かつての『安くて、おいしい』という店とは違ってきています」》(註:一部の記述を修正した)
この記者は値上げの悪影響を指摘した上で、「いきステ」の拡大路線に警鐘を鳴らした。
《「外食産業には『チェーン店の客単価は2000円が限界』という説があります。メニューの価格を上げる背景には原材料費・人件費の高騰があり、これからも値上げを強いられることになるでしょう。『いきなり!ステーキ』が今の魅力を維持するなら、2000円超の客単価で店舗数を増やし続けるのではなく、そろそろ適正規模を考える時期だと考えます」》
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