「柄本佑」に早くも名優の声 森繁久彌や渥美清と同じ道を歩む可能性
典型的な二枚目ではないものの、高齢になるまで主演級で活躍する名優がいる。故・森繁久彌さんや故・渥美清さん、故・小林桂樹さんらがそうだ。現役だと橋爪功(78)が筆頭格だろう。では、20代、30代の俳優の中で、誰がそうなるかというと、柄本佑(33)はその1人に違いない。2月8日まで放送された主演ドラマ「心の傷を癒すということ」(NHK、土曜午後9時)と準主演級で出ている「知らなくていいコト」(日本テレビ、水曜午後10時)も好評を博している。
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柄本が、なぜ高く評価されているかというと、第一には見る側に演じている感じを抱かせないからだろう。俳優の演技を貶す時、「クサイ芝居」という手厳しい言葉があるが、柄本の場合はその逆だ。
NHK「心の傷を癒すということ」では繊細で理知的な在日韓国人の精神科医・安和隆になりきっていた。吉高由里子(31)主演の日テレ「知らなくていいコト」では思慮深く優しい動物カメラマン・尾高由一郎にしか見えない。
尾高役だけを見るとイケメン俳優だが、役の幅は途方もなく広い。知る人ぞ知る傑作ドラマ「書店員ミチルの身の上話」(NHK、2013年)では、婚約者である主人公(戸田恵梨香、31)に捨てられる金持ちのバカ息子に扮した。内野聖陽(51)主演の映画版「臨場」では心神喪失状態を装った鬼畜のような無差別殺人犯役。2018年の映画「きみの鳥はうたえる」では青春末期を自由奔放に生きる書店員の若者をリアルに体現した。
「きみの鳥はうたえる」では毎日映画コンクールの男優主演賞を受賞。2019年2月の授賞式の際には、司会者が「(今回の役は)地なのですか?」と柄本に問い掛けた。演技があまりにリアルだったためだ。これに柄本は「いや、そう言っていただくのはうれしいのですが、地ではないですね」と苦笑い。「だって、カットかかったら、オレ、お父さんだし」と続けた。
そう、2012年に結婚した女優の安藤サクラ(33)との間には2歳になる愛児(性別非公表)がいる。安藤も映画「万引き家族」で2018年の毎日映画コンクール女優主演賞を獲った。史上初となる同賞の夫婦同時受賞で、話題になった。
柄本は翌2019年の映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」では実在の敏腕雑誌編集者・末井昭氏(71)に扮した。この演技で今度は日本映画批評家大賞主演男優賞を獲得。もはや映画界では押しも押されもせぬ名優である。映画に出演すると、大抵は賞を得るか、ノミネートされる。
映画だけではない。父・明(71)と2018年に他界した母・角替和枝さん(享年64)のホームグラウンドである舞台でも高い評価を得ている。2013年、新国立劇場で上演された主演舞台「エドワード二世」は、読売演劇大賞の最優秀作品賞を得た。
毎日映画コンクールは映画界で屈指の権威ある賞で、読売演劇大賞も舞台人の憧れ。柄本は映画界と舞台界では既にトップランナーと言って間違いない。
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