アカデミー賞2度目カズ・ヒロの「リアル過ぎる特殊メイク」

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  今月9日のアカデミー賞授賞式で、特殊メイクを得意とする芸術家のカズ・ヒロ(辻一弘)氏(50)がメイクアップ・ヘアスタイリング賞を受賞した。2年ぶり2度目の快挙だ。

 特殊メイクといえばエイリアンやゾンビを想像するが、今回受賞した「スキャンダル」も、前回の「ウィンストン・チャーチル」も史実に基づく映画。「スキャンダル」にいたっては、一見どこに特殊メイクを施したか分からないほどだ。

「一弘さんの凄さはそこにあるんです」

 カズ氏の弟子で自身も特殊メイク界の第一線で活躍する中田彰輝氏(45)が語る。

「怪物の特殊メイクなら空想上の産物なので、自由に嘘がつける。が、リアルな人間を造形する場合、人工皮膚の質感や皺の入れ方に僅かな差異や嘘があるだけで、観客を冷めさせてしまう。地味ですが非常に高い技術を要するんです」

 カズ氏は20代の頃から才能の片鱗をのぞかせていた。

「日本にいた頃に作品集を見せてくれたことがあって、老人の写真だったんですね。それで『この方はどこをメイクしたんですか?』と聞いたら、『これは全部特殊メイクで、本来は20代の男性だよ』と言われたんです。肌の質感に人工っぽさを全く感じさせない技術力は昔からのものでした」

 授賞式後の記者会見で、

「日本の文化が嫌だった」

 と語ったように、昨年3月に彼はアメリカに帰化し、日本国籍を放棄している。さる映画ジャーナリストは、彼の家庭環境を顧みる。

「10代の時に両親が離婚。引き取ってくれた母親とも、今は絶縁状態だとか。自著でも親戚のことを強く批判していますし、身を寄せるよすがもなく、日本への未練はなかったのでしょう」

 とはいえ、近々日本に凱旋し個展を開く予定もあるのでお楽しみに。

週刊新潮 2020年2月20日号掲載

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