陽岱鋼、一塁起用の屈辱 巨人OBが思い出す古田捕手“外野グローブ事件”
外野手転向を命じられた名捕手
記事では「巨人担当キャップ」が、次のように解説した。
《左翼はこれまでなら亀井、陽が互いにライバルとなる形だが、どちらかを一塁で起用できるメドが立てば、実績上位の2人の併用も可能になる。
さらに語弊を恐れずに言えば「外野ならいつでもどこでも守れる」2人が一塁を守れるようになれば、併用だけでなく、有事の際の保険にもなり、戦略の幅も広がる》
報知新聞だけあり、メリットを強調しているわけだが、実際のところはどうなのだろうか。
昨年の陽岱鋼は代打として、ある程度は存在感を発揮した。しかし、ポジション争いで亀井に破れたのは厳然たる事実だ。巨人OBで野球評論家の広澤克実氏(57)は、一塁手と外野手の経験を持っている。原辰徳監督(61)の“真意”を訊いた。
「プロ野球ファンの間では知られている話ですが、守備力に難がある選手が、一塁やレフトを任されることは珍しくありません。ただ、一塁の守備は、イメージされているほど簡単ではありません。投手のフィールディングを真っ先に助け、左打者の強烈な打球に対峙する必要があります。陽岱鋼くんは外野の守備力に定評がありますが、そんな彼でも、一塁コンバートは苦労するかもしれません」
そこまでの負担を陽岱鋼に強いる理由を、広澤氏は「率直に言って、原監督は陽くんに『外野手としてはクビ』というメッセージを伝えたのだと思います」と読み解く。
「今季も代打要員で使う見通しだからこそ、一塁を練習させていると見るべきでしょう。打席に立った後、野手として試合に出場しなければならないこともあります。外野の3ポジションだけでなく、一塁手も守らせることができるとなれば、起用の幅が広がるわけですから」
広澤氏は「実のところ、選手にとってコンバートの指示は、屈辱以外の何物でもありません」と語る。
「ヤクルトに入団して数年目の古田敦也(54)に対し、当時の野村克也監督(1935~2020)が『ユマキャンプには外野手のグラブも持ってこい』と命じているのを見たことがあります。『苦虫をかみつぶす』という表現がありますが、あの時の古田の顔ほど、ぴったりのものはなかったですね」
まだ新人と言っていい古田を、野村監督は次のように評価していたという。「ピッチャーが一流なら、古田のリードは一流。ただし、ピッチャーが二流なら、三流になってしまう。ウチのチームは二流のピッチャーしかいないから、古田は駄目なんだ」――。
「実際は、古田が練習でも外野を守ることはありませんでした。その後は球界を代表するキャッチャーに成長したのも、皆さんがご存知の通りです。野村監督は選手に屈辱を与えることが少なくなく、私も『あのクソジジイ』と何度、心の中で罵ったか分かりません(笑)。しかしながら、フォローも抜群です。野村さんの指示に応じて試合で活躍し、本当にプロ選手冥利に尽きると感動したことは何度もあります。『この監督についていけば、絶対にチームは優勝するな』と信じて疑いませんでした」
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