巨人二軍の新指揮官、「阿部慎之助」はモチベーター型、選手ファーストの細やかさ

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 ある意味、今年のプロ野球界で最も注目されている“新指揮官”が春季キャンプで精力的な動きをみせている。巨人の阿部慎之助・二軍監督が2月4日、チーム初の紅白戦で実戦初采配を振り、見事にチームを勝利に導いた。相手は一軍。主力不在の控え組中心とはいえ、ファームの選手たちにとっては“格上”になる。

「阿部二軍監督は『今出せる力を出せ。しっかりアピールの場だと試合に臨ませた』と話していました。試合前のベンチで「下克上しよう!」と檄を飛ばすと、その言葉に応えるように、1番で起用した湯浅大がいきなり左中間を破る二塁打をお見舞い。2回裏に先制点を奪われましたが、直後の3回表に、キャンプ初日から『ずっとアピールしろと言ってきた』と発破をかけ続けてきた育成助っ人・モタのタイムリーなどで3点を奪って逆転。以降もファームの選手たちがハツラツとプレーしていました。最終的に計14安打で7得点。7対1での“圧勝”でしたね」(巨人のキャンプを取材する記者)

 結果もさることながら、目についたのは“阿部軍”の気迫だった。そして、それは阿部二軍監督が選手たちに強く求めたものだった。「ファームにいる選手は、一軍にいる選手と戦うんだ、と。とにかく、そういう意識をしっかり持ってやってほしい」。この言葉通り、ファームの選手たちは攻める姿勢を貫いて下克上に成功した。

「一軍を指揮した元木大介ヘッドコーチは『二軍の選手の方が気持ちが出ていた』と語ったほか、宮本和知投手チーフコーチも『向こうの圧に負けてしまった』と話すなど、“阿部軍”のチームとしての一体感に舌を巻いていました。また、原辰徳監督は『阿部チームが非常に元気があって、ピッチャーもバッターもいいところが目立っていた』、『(阿部二軍監督は)言葉でも姿や形においても自分を出している。意思がしっかり出ているというか、遠慮なく伝えられているのはすごい』などと、自らの有力な後継者候補の初采配に賛辞を送っていましたね」(前出の記者)

 ここで改めて認識させられるのは、阿部二軍監督のモチベーターとしての高い能力だ。監督に求められる仕事は様々だが、その中で「その気にさせてあげるというのが僕らの仕事」と語っている。キャンプ初日には、最初の円陣で「みんながキャプテンのつもりでやってくれ」と語りかけ、選手たちを鼓舞して練習をスタートさせた。自らバットを持って計310本のノックを打ち込むと、「選手のとき以上に、より興味を持てる。いろいろ興味が湧いてくる」と打撃投手も務めたほか、さらに一軍ブルペンに出向いて新たに導入された“アピールレーン”で投げる若手投手に熱視線を送り、精力的に動き回った。

 それ以外でも、阿部二軍監督は、“監督としての資質”を早くも垣間見せているという。巨人を取材するスポーツライターはこう見ている。

「初采配の試合では、ベンチの中から野太い声を張り上げるだけでなく、選手に関して細かくメモをしていた。コーチが見られないところを自分が補って、ミーティングで伝えるためだそうだ。選手がどういう気持ちや振る舞いでベンチにいるのか、それを観察するために、一歩引いた位置からチーム全体を見渡して、選手を評価する姿勢も見せていた。また、紅白戦終了後の取材対応でも『阿部監督、初采配初勝利とかいらないから。ちゃんと目立った選手をちゃんと記事にしてもらいたい。それが彼らの自信になる』とスポーツ紙の記者に話していた。キャンプが始まる前から“鬼軍曹”のイメージが付いたが、本来は愛嬌たっぷりの人物。ユーモアを交えながら『選手ファースト』の信念を貫くとともに、マスコミを通して選手たちにメッセージも送っている」

 原辰徳監督が「僕をはるかに超える監督にならなきゃいけないわけですから」と大きな期待を寄せる阿部二軍監督。今は“いいところ”ばかりが目立つが、今後は苦難が訪れ、苦境に立たされることもあるだろう。そのときこそ、真価が問われることになる。それが分かったうえでも、順調な監督人生をスタートさせていることは、間違いない。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月10日掲載

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