台湾総統選「蔡英文」再選のウラ 中国共産党のあからさまな支援に台湾住民が反発

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 1月11日、台湾で総統選挙が実施され、民進党の現職・蔡英文総統が、国民党の韓国瑜・高雄市長に過去最多の265万票の大差をつけて再選された。得票数817万231票(得票率57・1%)は、これまた過去最多で、台湾・日本の主要紙では「圧勝」、「大勝」の見出しが躍った。

 もっとも、当初蔡英文の「大勝」を予想する声は皆無だった。実際は、国民党候補の背後にいる中国共産党に対する危機感を持った台湾住民が、「蔡総統を負けさせるわけにはいかない」と、雪崩を打って蔡英文に投票したのだ。決定打となったのは、若者たちの投票だった。そうでないと、75%の高い投票率の理由を説明できない。

 私が投票二日前の1月9日に現地入りしてみると、ほとんどのテレビ番組が、国民党の韓国瑜の演説を放映し続けていた。国民党と中国が、スポンサーになることによって番組を買い占めていたのだ。選挙戦最後の夜、国民党と中国の支援を受けた韓候補は、地元高雄市で数十万人を動員。その夜もテレビでは、「年を取った紅衛兵」などと揶揄される高齢の国民党支持者の中で、二人の若い女性支持者が涙を流すシーンを、繰り返し流していたのだった。

 そもそも、国民党の総統候補を選ぶ党内予備選の段階では、高雄市長の韓を、ビジネス界出身の郭台銘が追い上げる展開だった。郭は、シャープを買収した鴻海精密工業の会長である。その後、韓が郭を大きく引き離し、この予備選のさなか、韓国瑜が「香港のデモなど知らない」と失言したことなどで、支持率が低下。ただ昨年7月の世論調査では、韓39・1%、郭32・1%で、二人の差はほとんどなかった。

 ところがその後、韓が、支持率を“突然”回復させた。この背景にも、中国が台湾の民間紙『中国時報』などに介入し、韓を勝たせるように誘導するメディア操作があった。韓が国民党の候補に決まった後も、中国の意を受けた国民党系メディアによる「フェイクニュース」的な民進党批判など、北京による韓候補への様々な支援がなされた。韓候補の選挙遊説には、20万人がバスをチャーターして動員されたが、その資金も台湾商人を通じて、各地の里長(日本の町内会長に相当する)に「裏」で渡された。

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