【新型コロナ】『マスクの品格』の著者に聞く 子供にマスクは着けさせるべきか
“マスク神学論争”に決着
市販されているマスクの中には「ウイルス、飛沫、花粉を99%カット」と書かれているものが少なくない。つまり『漏れ率1%』をうたっているのである誇大広告の可能性があるのかと言えば、それも違うという。
「マスクのフィルターだけの性能を見れば、0.1μmのウイルス粒子を99%の除去する能力を持つものも珍しくありません。ところが私たちの顔には凹凸があります。四角形のマスクであれば、顔と接している上下左右は無意識に浮きあがっているため、大幅な漏れ率が計測されてしまうのです。また、フィルターの性能が高いと、空気はフィルターを通らず、流れの良い隙間を通るようになり、粒子も隙間からより入りやすくなります」(同・大西准教授)
大西准教授が被験者に「マスクの周りを押さえながら計測を受けてください」と指示すると、それだけで漏れ率は平均20%も減少したという。
「厚労省の規格をクリアした防塵マスクも、基本的には同じ傾向を示します。防塵マスクの中にはカップ型をしているものもあり、なるべく顔に密着するようにデザインされています。ゆえにその効果が発揮され、ある被験者には漏れ率が1%以下になる防塵マスクもありました。しかし、同じ防塵マスクでも別の被験者が装着すると漏れ率が上昇してしまう場合もあるのです。顔の形は千差万別なので、『どんな人の顔にもぴったり装着できるマスク』は存在しないと改めて理解しました」
今後は、役所や総合病院などにマスクの漏れ率を計測する機械を置き、希望者には自由に測らせるべきだと大西准教授は指摘する。
だが現時点で、そんなサービスは日本に存在しない。そして新型コロナウイルスは今も猛威を振るっている。我々は一体、どうすればいいのか。
「整理してみましょう。まずマスクは自分が感染源になるリスクを減少させます。つまり自分の飛沫を周囲に飛ばすのを防ぐのです。次にマスクを装着することで鼻や喉が保湿されます。そのおかげで、マスク内はウイルスが増殖しにくい環境となりさらに、喉にバリアが張られます。これで感染リスクが下がる可能性が期待できます。さらに、たとえ漏れ率が86.3%だとしても、除去率が13.7%存在するのも事実です。マスクを着けることによって、感染リスクを下げるという可能性は否定できません」(同・大西准教授)
【1】自分が感染源になるのを防止、【2】鼻や喉を加湿してウイルスを防ぐ、【3】マスクには一定の除去率が存在する――この3点から考えて、「マスクをしていないよりは、マスクをしていたほうがいい」という事実が導き出される。
しかしながら、ネット通販などで1箱数万円にまで価格を釣り上げられた転売品を、わざわざ買う必要がないことも同時に浮かび上がる。
「225人の被験者で、126人の方が漏れ率100%を記録しました。割合は56%になります。半分以上の人は、マスクをしていてもマスクをしていないのと変わらないのも事実なのです。このデータから、非常識な値段のマスクを買ったり、自分の顔に合わないマスクを買い占めたりする必要がないことも明らかです。マスクの購入と着用に関しては、何よりも今は冷静な態度で臨むべき時期なのです。あらかじめ自分の顔に合うマスクを見つけておき、正しい着用方法をマスターしておくことで冷静になれるでしょう」(同・大西准教授)
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