【新型コロナ】『マスクの品格』の著者に聞く 子供にマスクは着けさせるべきか
報道の少ない子供用マスク
新型コロナウイルスが世界で猛威を振るうにつれ、日本国内からマスクが消えていく。幼児や子供の保護者にとっては、自分自身だけでなく、我が子の感染リスクにも不安を感じているに違いない。
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テレビのワイドショーを中心に、マスクの異常な高値が報じられている。ネット通販などで1箱1万円を超える値段で転売されているのだ。
売り手が電話取材に応じ、変換された音声で「こちらも入荷に努力した」などと強弁するのをご覧になった方も多いだろう。こんな状況では、「子供とマスク」について報じる記事が少ないのも当然かもしれない。
この「マスク騒動」を沈静化させるためか、「新型コロナウイルスの予防にマスクは無意味」という報道も少なくない。
例えば朝日新聞デジタルは1月29日、「新型肺炎、コンビニのマスクで防げる? 専門家に聞いた」を掲載した。
冒頭部分に「2人の幼児を育てる筆者は、子ども用のマスクを探して薬局をのぞきましたが、在庫切れと言われました」との一文がある。つまり子供の感染リスクにも焦点を当てた記事になっているわけだ。
それでは内容を、ご紹介しよう。要点を箇条書きにさせていただく。
【1】コンビニやドラッグストアで販売されている「サージカルマスク」は、自分の唾液や飛沫を拡散させないため、つまり自分が他人に感染させないために使う。
【2】サージカルマスクや防塵マスクに、感染者からの伝染を防ぐ能力はない。新型コロナウイルスがフィルターを通過してしまう。
【3】厚生労働省が定める規格を満たした「防塵マスク」とサージカルマスクを比較したデータがあるが、感染防止の能力に差はなかった。
【4】発症者の死亡例は60代以上で、持病があった者が中心。若年層の感染者が重篤化したという報告は、今のところ確認されていない。子供も同様の可能性がある。
ウォール・ストリート・ジャーナル(電子・日本語版)も2月3日、以下のような見出しの記事を配信した。
「マスクの感染防止効果、一部専門家は疑問視 多くはコロナウイルスの防御にあまり効果はなく、着用が逆効果になるケースも」
内容は朝日新聞の報道と同じと言っていい。紹介は割愛させていただくが、記者の署名については触れておく必要があるだろう。
名前が記載されているのは2人で、それぞれ北京と香港の記者とされている。感染の“発生源”で取材された記事であっても、「マスクは無意味」という結論になるようなのだ。
日本政府のマスクに対する見解は?
子供用どころか、大人用のマスクも不必要という印象なのだが、ならば日本政府は公式に、どのような見解を示しているのだろうか。
首相官邸の公式サイトに掲載されている「新型コロナウイルス感染症に備えて ~一人ひとりができる対策を知っておこう~」を見てみよう。
サイトには予防法として「手洗い」、「健康管理」、「適度な湿度を保つ」という3点を推奨している。マスクは入っていない。
マスクは予防法とは区別され、別に「マスクの効果は?」というコラムにまとめられている。要点を箇条書きでご紹介する。
【1】咳やくしゃみ等の症状のある人は積極的にマスクを着けるべき。
【2】予防のためにマスクを着けるということは、人混み、屋内、乗り物など、換気が不充分な場所では予防策の1つとして考えられる。だが、屋外では相当に混み合っていなければ、着用の効果は認められない。
政府の見解も朝日新聞やウォール・ストリート・ジャーナル同じだ。「自分が感染源にならない」という効果は認めているが、「感染源から身を守る」観点になるとマスクの効果は限定的だと指摘している。
しかし、もし朝日新聞やウォール・ストリート・ジャーナル、そして日本政府の発信する情報を日本人や中国人が納得したならば、マスクの買い占めや転売騒動などは起きなかったはずだ。
多くの人が「予防のためにマスクを装着したい」、「予防のためにマスクは必要だ」と考えている。このギャップを、どう受け止めればいいのだろうか。
そこで改めて、専門家に取材を依頼することにした。聖路加国際大学の大西一成准教授は専門が公衆衛生学。PM2・5の研究を重ねるうちに、マスクの効用についても調べる必要を感じ、独自の調査を重ねてきた。
子供のマスク装着を考えるには、まず大人の現状を確認する必要がある。昨年に『マスクの品格』(幻冬舎メディアコンサルティング)という著書も上梓した大西准教授は、「現在はマスクへの過大評価と過小評価が極端な形で併存しています」と指摘する。
「自著で記述しましたが、2017年にドラッグストアやコンビニなどで購入した『衛生マスク』を225人に装着してもらい、どれだけ外部の粒子が侵入してくるのか、“漏れ率”を調べました。すると126人が『漏れ率100%』を記録したのです。マスクを付けていないのと全く変わりません。平均でも漏れ率は86.3%に達しました。単にマスクを装着するだけでは、新型肺炎やインフルエンザの原因となるウイルスの侵入を防ぐことはできないのです」
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