新型コロナウイルスを拡散する「毒王」=スーパー・スプレッダーの正体

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ウイルス変異の可能性

「ウイルスには、毒性は強いが感染力は弱いものと、毒性は弱いながら感染力の強いものがあります。前者はエボラ出血熱やSARS、後者は新型インフルエンザが該当しますが、新型コロナウイルスは後者と言えるでしょう」

 こう解説するのは、同志社大学客員教授で「松本クリニック」院長の松本浩彦氏だ。確かにSARSの致死率9・6%に比べ、今のところ新型コロナウイルスのそれは3%程度と見られている。その上、

「この致死率にしても、中国の医療水準の低さが影響していると見るべきでしょう。実際、日本国内初の感染患者は5日間入院しただけで退院しています。特効薬はないとはいえ、インフルエンザと同じようにきちんと隔離し、治療を施せば重症化する確率は低い」(同)

 かといって、楽観視はできない。

「SARSやMERS(中東呼吸器症候群)に比べて致死率は低いものの、高齢者や基礎疾患を持っている患者にとって命に関わるウイルスであることに変わりはありません」

 と、感染症に詳しい東京農工大学の水谷哲也教授は警鐘を鳴らす。しかも、

「SARSが流行したきっかけになったのは、『スーパー・スプレッダー』と呼ばれる、一度に多人数を感染させる患者の存在でした。あるスーパー・スプレッダーから、また別のスーパー・スプレッダーへと感染することによって、SARSは爆発的に広がっていった。今回の新型コロナウイルスでも、ひとりの患者から14人の医療従事者が感染したという報道があり、すでにスーパー・スプレッダーが現れているのかもしれません」

 中国では、このスーパー・スプレッダーのことを「毒王」と呼ぶ。同じ感染者でも毒王になる人とならない人がいるわけだが、

「誰がスーパー・スプレッダーになるかというと、おそらく免疫力の高い人。その人はウイルスを保有しているにも拘(かかわ)らず、免疫力が高いため症状があまり出ず比較的元気なので、結果的に動き回って多くの人を感染させてしまうのです」(前出の松本院長)

 他にも、新型コロナウイルスに関しては警戒すべき点がある。

「ウイルスにはDNA型とRNA型の2種類があり、今回のウイルスは後者です。RNA型の特徴は、変異を修復する機能を持っていないため、損傷が起こりやすい点にあります。つまり、DNA型より変異する可能性が高いということです。今後、毒性も感染力も上がるケースが考えられ、現時点でSARSより毒性が弱いからといって油断するべきではありません」(水谷教授)

「感染力が強まっている」と認めた中国政府は「泥縄病院」建設に加え、団体旅行の禁止、また武漢から離れた上海などでも移動規制を行い、五月雨式で場当たり的な対応に終始している感がある。このこと自体が、すでに新型コロナウイルスが変異を遂げ、「制御不能」に陥っている証に映らなくもない。拡大し続けるこの脅威に対抗する予防策は果たしてあるのだろうか。

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