メッキが剥がれた小泉進次郎が名宰相になるには “敵”は田中角栄、山本太郎…

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山本太郎のほうが地に足がついている

 その点で、注目したい小泉氏のライバルがいる。「れいわ新選組」の代表・山本太郎氏だ。角栄法に対する彼の見解は定かではないが、田中角栄のような「大きな政府」志向であり、庶民的な人気を得ていて類似点を指摘する識者もいる。実際、看板政策の消費税廃止と法人税強化など、まさに昭和期への郷愁を刺激している。

 これはよもやの事態だが、近い将来、小泉氏が自民党総裁となり、山本氏が野党再編を主導して党首になったとしよう。二人が政権奪取をかけて、ぶつかり合うことになったら、どうなるのだろうか。

 どちらも大衆人気がある点で共通はしているが、最近の小泉バッシングで気になることがある。結婚前に人妻社長と不倫したとされるスキャンダルや、それに付随してホテル代に政治資金を充てた疑惑が出ていることにも閉口するが、ネット世論を見ていると、その庶民離れしたセレブ的立ち居振る舞いが反発を招いているような印象だ。

 かつては小泉父子を熱心に追いかけ、最近は進次郎氏に距離を置き始めたジャーナリストの常井健一氏は『2020年の論点100』(文藝春秋)への寄稿で「最近の小泉を見ると、名立たるIT長者ら、雲の上に住む人たちと並び、横文字の経営用語を唱える姿ばかり。極めつきが『人気女子アナ』とのセレブ婚だった。これでは国民の生活感覚と距離ができ、人心が離れるのは時間の問題だ」と厳しく断じている。

 長引くデフレと社会保障負担の増加。多くの国民、特に氷河期世代などは生活が苦しい中で、“奨学金チャラ”を政策に掲げる山本太郎氏といまの小泉氏を比べてみれば、山本氏の支持者でなくても、どちらが地に足をつけているか一目瞭然だろう。

小泉氏に贈りたい大勲位の言葉

 もちろん現実には、全国津々浦々に張り巡らされた自公の選挙基盤は揺るぎなく、山本太郎氏が野党を糾合しても政権交代は簡単ではない。しかし、小泉氏があまりに庶民離れした振る舞いを見せ続けてしまうと、民心はいつまで総理候補ともてはやしてくれるのだろうか。

 山本氏が論文を載せた同じ号の「文藝春秋」(2020年2月号)で、渡邉恒雄氏が盟友、中曽根康弘元首相に終の住処に招かれたときのエピソードを披露している。中曽根宅の廊下は人がようやくすれ違えるほどだったといい、渡邉氏が中曽根氏の長女に狭い家に住む理由を尋ねると、大勲位は長女にこんな考えを話していたと言う。

「政治家は小さな家に住んでいなければならないんだ」

 小泉氏が、歴史に残る宰相を目指すのであれば、政治家として足元を見つめ直さねばならないのではないか。

新田哲史(にった・てつじ)
アゴラ編集長。株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長。1975年、神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、読売新聞記者、PR会社を経て独立。15年に言論サイト「アゴラ」の編集長に就任。著書に『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックスPLUS新書)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年2月7日掲載

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