苦境の日高屋が「ちゃんぽん専門店」をオープン、リンガーハットの独壇場を切り崩せるか

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「ちゃんぽん」メインにメニューを絞り込む

 初めて「菜ノ宮」を訪ねたのは12月下旬。店名の「菜ノ宮」とは、「野菜がたっぷり」というアピールだろうが、意味が分かりにくい。「ちゃんぽん日高屋」の方が浸透しやすいのではないか。ただしここで「日高屋」を名乗ってしまうと、新鮮味に欠けると考えたのだろうか。

 店頭にあるアルバイトの募集告知で「日高屋」のグループ店舗であることが分かった。上に大きく「Web募集!」とあり、「日高屋バイト 検索」で気付いた。それにしても「オープン時給手当300円UP」というのは高額だ。

 11時~22時の勤務時間で「高校生」「一般」ともに通常1020円~がオープン手当付きで「1320円~」。深夜(22時~翌1時)に至っては通常1275円~にオープン手当が付いて「1575円~」となっている。今日の人材集めにはこれほどの時給が必要ということだ。

 店内は木材をイメージした薄い茶色を基調にしたデザイン。席は整然と配列されていて各テーブルに1つずつタブレットの端末が置かれている。カウンター席は1人客と想定しているから、タブレットは1人分の距離を保ちながら整然と並んでいる。

 ちゃんぽんのメニューは「豚骨ちゃんぽん」660円(税込、以下同)、「味噌ちゃんぽん」690円、「醤油ちゃんぽん」690円、「ピリ辛豚骨ちゃんぽん」730円。ほかに「皿うどん」790円、「餃子(5個)」200円、「ミニ丼(昆布生姜)」155円、定食として「ニラレバ炒め」定食780円、単品500円、「唐揚げ」定食810円、530円等々。「餃子」の“200円”は定番としての訴求効果は高いだろう。

 “ちょい飲み”の象徴であるアルコールとおつまみのラインアップは「日高屋」と同様。「ハイボール」290円、「レモンサワー」290円は相変わらずアルコール度数が高く酔っ払えるのがうれしい。「イワシフライ」240円もある。ただし、車利用の多い店であるから既存の駅前立地と比べるとちょい飲みのお客さまは少ないのではないか。

オペレーションの効率化を追求

 フロアスタッフにオーダーしようとしたところ「ご注文はすべてタブレットでお願いします」という。このような形で、オペレーションの省力化を図ろうとしているのだろう。キッチンをのぞいてみると、作業動線が一本で働きやすく、ここでもオペレーションの省力化が図られている。

「日高屋」が経営マスコミに取り上げられるようになったのは2000年に入ってからである。その中で筆者の記憶に鮮明に残っているのは『日経MJ』の記事である。そこでフォーカスされていたのはキッチンの作業動線のことであった。具材のバラエティや量目が1ポーションずつ計量されて均一のクオリティのものを作ることが可能で、かつ働きやすいキッチンになっている。このような部分では「日高屋」は他に先んじてきた。さらに「菜ノ宮」にはチャーハンがないので、「日高屋」よりもオペレーションは効率化されている。

 ちゃんぽんは「豚骨ちゃんぽん」と「ピリ辛豚骨ちゃんぽん」を食べた。スープはクリーミーさが抑えられてすっきりしている。具材のイカ、エビ、アオヤギなどがバリエーションを豊かにして「健康的な日常外食」を実感させる。ほかにちゃんぽんは2種類あるが、4種類のバラエティはリピーター利用を発掘することであろう。

 率直に述べて、「ちゃんぽん屋さん」としての価値において「リンガーハット」と「菜ノ宮」を比べると「リンガーハット」に安定感を感じる。しかし、「菜ノ宮」は立ち上がったばかりで、これからブラッシュアップは重ねられていくだろう。

 今後ハイデイ日高屋が挑む新立地開拓と新業態開発は同社に大きなメリットをもたらすと予想する。現状約450店に対し同社のホームページでは「600店舗構想」を掲げている。多業態を持つことによって、業績の動向によっては既存の「日高屋」のブランドを変更することも可能であるし、ロードサイド立地を開拓することによって得意とする駅前立地での自社競合が回避される。また、一都三県を中心に店舗が増えていくことで既存の工場の稼働率が高まり生産性も上がる。

「日高屋グループは一都三県を制覇する」と言われる日が近いのではないか。

千葉哲幸(フードサービス・ジャーナリスト)
ライバル誌である柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』両方の編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴三十数年。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月5日掲載

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