新型肺炎で中国、南北朝鮮が連鎖倒産に追い込まれる? 米国は“カメの論理”で舌なめずり

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「中国売り」も始まった

――では、北朝鮮は中国に頼るしかない?

鈴置:それも困難になりました。中国自身も資本逃避の危機に直面しています。中国製造業の心臓部とされる湖北省が、新型肺炎により「閉鎖都市」となったのです。中国の生産活動は相当長期間にわたり縮むのは確実です。

 日本は湖北省の、米国や豪州は湖北省に限らず中国全土に滞在していた外国人の入国を原則、禁止しました。世界の製造業者は中国工場の脱出を検討せざるを得ない。

 2月3日、上海総合指数が前営業日に比べ7・72%も下げました。「中国売り」が始まったのです。上海外国為替市場でも人民元の対ドル相場は大幅に続落しました。2月3日は一時、7・0268元と、2019年12月12日以来約1カ月半ぶりの元安水準を付けました。

 2月4日は株、為替ともやや持ち直しましたが、これで市場が回復すると予想する向きはありません。新型肺炎の流行自体が「これからが本番」と見られるからです。

「中国から工場を奪う」と宣言した米商務長官

 ここで注目すべきは米国です。1月30日、ロス(Wilbur Roth)商務長官が「これで北米――米国とメキシコに雇用が戻る」と語りました。

 舌舐めずりするかのような発言です。米国は貿易戦争で弱った中国を一気に叩く作戦でしょう。中国も動きがとれません。なされるがままです。

 ボコボコにされ、ようやくコーナーに戻って息をついているボクサーのようなものです。まだ、第2ラウンドのゴングが鳴っていないのに、座っているところを米国に殴りつけられた――感じでしょう。

 いつもは強気の外交部の華春瑩・報道官も、1月31日の会見ではロス発言に関し「薄情だ」と泣きごとを言うばかりでした。サウス・チャイナ・モーニイング・ポスト(SCMP)の「Coronavirus: China’s foreign ministry calls US Commerce Secretary Wilbur Ross ‘unkind’ for saying outbreak will accelerate the return of jobs to the US」(2月1日)が2人のやり取りを伝えています。

――中国はとても北朝鮮を助ける余裕はない?

鈴置:仮にあったとしても、下手に動けば米政府に報復されるでしょう。今のところはロス商務長官が指摘するように「工場が中国から逃げだすぞ」との脅しで済んでいます。これが「カネが逃げだすぞ」になったら大変です。

 中国はまな板の上のコイ。ジタバタしようものなら米国の包丁でスッパリ裂かれてしまいます。

親カメの上に子カメ……

――南北朝鮮と同じなのですね。

鈴置:中国という親カメの上に、韓国という子カメが載っている。その上には北朝鮮という孫カメ。孫カメが大きく揺れて、子カメの背中から落ちそうになっている。

 それを子カメが助けようとしたら、米国は子カメをひっくり返せばいいのです。もし、親カメが孫カメを助けそうになったら、親カメそのものをひっくり返せば3匹とも裏返し――。構図はこんなところです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年2月4日掲載

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