新型肺炎で中国、南北朝鮮が連鎖倒産に追い込まれる? 米国は“カメの論理”で舌なめずり

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国境を閉鎖した北朝鮮

――北朝鮮経済もおかしくなる……。

鈴置:1月22日にいち早く、中国との国境を閉鎖し、貿易と観光客の受け入れを止めました。同月30日には韓国との連絡事務所の閉鎖も通告しました。

 北朝鮮の衛生状態は極めて悪い。伝染病が一度はびこれば、食い止められなくなる、との自覚から厳しい「鎖国」に出たと思われます。

 しかし、この措置で北朝鮮の外貨不足が激化し、経済危機に陥る可能性がグンと増しました。そもそも2019年末以降、世界各国は北朝鮮の出稼ぎ労働者を受け入れると国連制裁違反となります。

 北朝鮮が「2019年末までに制裁を緩和しろ」と米国に強く求めたのもそのためでした。北にとって新型肺炎は「泣き面に蜂」なのです。

 興味深いのは「予定していた金剛山の観光施設の撤去を中止する」と1月30日に韓国に通報したことです。これまで北朝鮮は「韓国が造った施設を壊して中国人観光客向けに新たに建設する」との姿勢を打ち出していた。

 韓国に対し「観光客を送れ――ドルを送って来い、送らなければ中国から観光客を引くぞ」との脅しでした。ところが新型肺炎で中国人の入国を禁止する羽目に。

 それも長期間にわたる見通しとなったため「中国人」カードが消滅してしまった。そこで慌てて作戦を変更、韓国への嫌がらせを中断したというわけです。

「韓国も制裁の対象」と脅した米大使

――文在寅(ムン・ジェイン)政権は大喜びで観光客を北朝鮮に送る……?

鈴置:それは米国が許しません。確かに、国連制裁に北朝鮮観光は含まれていません。だから今までも、中国は観光客を送ってきた。文在寅政権も今年1月に入ってから「韓国人が個人観光客として訪朝するのは違反ではない」と言い出した。

 しかしもし、韓国が観光客の送付を始めたら、対北制裁のタガが一気に緩んでしまいます。北朝鮮が非核化しないともっとも困る国が、ドルを堂々と送ることになるわけですから。ハリス(Harry Harris)駐韓米大使は韓国への2次制裁をちらつかせて牽制しています。

――韓国も経済制裁の対象にする、というのですか!

鈴置:その通りです。ハリス大使は1月16日に世界の記者の前で「北朝鮮観光は制裁対象になり得る」と語りました。ロイターの「U.S. Ambassador becomes mustachioed face South Korean discontent」(1月17日)が以下のように報じています。

・Harris said South Korea was a sovereign nation and noted that tourism is not banned by international sanctions imposed on the North. But he said some aspects of a tourism program could potentially run into trouble with sanctions.

 駐韓米大使がこれだけ明白に韓国に警告したのです。もし北朝鮮の求めに応じ観光客を送ったら、米国は韓国に厳しいお仕置きをするでしょう。

 これだけ韓国経済の地合が悪くなっているのです。特に何かしなくとも、米韓関係の悪化を見て、資本逃避が起こると思われます。

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