冨山和彦(経営共創基盤CEO)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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ローカルの重要性

佐藤 そこで、冨山さんは企業再生の立場から、グローバル経済とローカルな経済を分けて、ローカルの重要性を説かれている。

冨山 GAFAは一見派手にやっているように見えますが、実はその雇用数はすごく少ない。日本企業もグローバルで勝っていけばいくほど、国内に残る雇用者の質は高くなっていきますが、数は減ります。だから国家や社会という単位で、人を幸せに、豊かにするには、彼らに頑張ってもらうことはあまり重要ではない。おそらく社会全体の8割9割の人は、ドメスティックでローカルな産業で働くことになりますから、この人たちの賃金水準をどう上げられるか、そのためには生産性をどのくらい上げられるかの方が大事なんです。

佐藤 なるほど。

冨山 そこで問題になるのは、日本は会社の数が多すぎることです。数が多ければ、それだけ優秀な経営者も必要です。でも経営者って、希少資源なんですよ。100万社あったら100万人の優秀な経営者がいないと、個々の企業の生産性は上げられない。100万人は無理です。でも1万人であれば、優秀な人はいる。だからその1万人に100分の1の数の会社を経営させた方が、生産性は上がるし、給与も上がるんです。

佐藤 外務省も同じです。アフリカで大使館の数を増やそうとしても、大使に適任な人材なんてそうはいないんですよ。昔、大使の3分の1を外部から登用する話が出たことがありました。その時は外務省を挙げて猛反対しましたが、人材がいるわけではない。だから大使館を作れば作るほど、どんどん変な人を大使にしなくてはいけなくなってしまう。

冨山 同じことです。会社の数を減らすのは、経営者の問題が大きい。

佐藤 戦争で、兵士に間抜けがいたら、彼が弾に当たって死ぬだけですが、司令官が間抜けだったら部隊が全滅しますからね。

冨山 おっしゃる通りです。一方で、日本の兵隊のレベルは高いんですよ。やっぱり真面目だし、きちんと働く。他の国だったら、行き帰りに身体検査して、何か持ち出していないかとか、そのレベルから始めなくてはならない。

佐藤 そういう国の方が多いかもしれないですね。

冨山 だから日本は司令官や将校がしっかりしていれば、それなりに生産性は上げられるんです。そうすれば、給料も上がる。

佐藤 生活水準も上げられる。

冨山 大金持ちを大勢作るという議論よりも、年収300万円の人をどうやったら400万円、500万円にするかのほうが極めて大事なことなんです。

佐藤 社会的な安定も作り出すことができますからね。

冨山 ここの100万円、200万円の差は大きい。人生が変わる100万円になります。でも5億円の人が10億円になっても人生は変わりません。だからマクロ経済的にも、そこをどう押し上げるかが、より重要なんです。

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