サッカー強豪「神村学園」を保護者ら提訴 生徒が置かれた通信制の“劣悪な環境”

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強豪「神村学園」がレッドカードの淡路「サッカービジネス」(1/2)

 世間は受験シーズンの真っ只中。少子化で、今や学校は入学者を集めようと必死である。功を焦った指導者が、教育を忘れてビジネスに猛進すればどうなるか。サッカー強豪校が訴えられた裁判沙汰は、子や孫を持つ世代にとって、決して対岸の火事ではないのだ。

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 サッカー選手とユーチューバー。ここ数年、男児が憧れる職業の上位に必ず並ぶのが、この二つ。全国の小学生が対象の、日本ファイナンシャルプランナーズ協会による最新(2019年4月発表)の「将来なりたい職業」ランキングでも、2位が「サッカー選手・監督など」で、6位は「ユーチューバー」となっているのだ。

 憧れの肩書を二つながら兼ね備える男に学べると聞けば、まだ世事に疎いサッカー少年たちはきっと羨望の眼差しを向けるに違いない。この学園に入学するまでは……。

 学校法人・神村学園高等部が開設した「淡路島学習センター」(兵庫県淡路市)は、プロサッカー選手を育成することを目的とした全寮制の通信制教育施設だ。関西メディアを中心に、新たな取り組みだとして持て囃されたこともあったが、昨年末に産経新聞がある騒動を報じて以降、評判は一変してしまう。

 19年4月に入学したセンター1期生22人の約半数にあたる10人が、8月末までに自主退学。12月27日には、元生徒とその保護者18人が学園とセンターを相手取り、総額2131万円の損害賠償を求めて松江地裁益田支部に提訴したのだ。開設から半年を経ずして生徒が“集団脱走”する異常事態はなぜ起きたのか。そのワケを知る前に、被告となった学園について説明しよう。

 創立60年超の神村学園は、全国高等学校サッカー選手権大会に鹿児島県代表として3年連続出場。女子サッカー部も今冬の全国大会で準優勝、過去2回の優勝を誇る。野球部も甲子園の出場経験があるスポーツ強豪校として知られる。

 問題となった淡路島のセンターは、神村学園の“分校”として、サッカーに専念できる教育が最大のセールスポイントだ。そのセンター長として、本校から業務委託の形で指名されたのが、裁判で学園と共に被告となった上船(うえふね)利徳総監督である。弱冠27歳の彼は学園OBで、東京国際大を経てドイツのプロチームと契約するが、ケガで現役を引退。帰国後は明大サッカー部などでコーチを務めた。

 指導者としてサッカー界の頂点を極めたいと、過去のインタビューでは「最年少の日本代表監督になる」と豪語する傍ら、SNSでは「起業家」「ユーチューバー」と称し、サッカー少年たちにアピールしている。

「本当に上船監督は口が上手くてね。子供たちや保護者の前で、『淡路は間違いなく、日本で最高の練習環境』だと話していましたから」

 とは、原告の元生徒とその保護者たちを束ねる島根県在住の男性(35)だ。

「進路に迷う私たちに、彼は『午前中はサッカーの練習、昼からしっかり勉強をします』とハッキリ言いました。全日制の高校と同じ学習内容を教えて貰えるのかと尋ねたら、『少人数制だからマンツーマンで苦手分野の科目を伸ばせる。心配しなくて大丈夫』と自信満々に言い切ったのです」

 しかし、いざ学校生活が始まると、それらが“口約束”だったことが露見する。

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