86歳でまた当選「9選町長」が老害批判に反論 新潟県出雲崎町

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「禅譲の時代ではない」

「私が政治家を目指したのは、高校卒業後に同じ新潟県の田中角栄先生の研修会に誘ってもらったのがきっかけでした。そこで角栄先生の政治への熱い思いに感化されましてね。町長になってからの32年間、命をかけて町政に取り組んできました。この間、不正はひとつもなく清廉潔白だったと言い切れます。過疎化の波に襲われながらも、令和元年度は町からの転出より転入のほうが多くなり、かつ出生数も増えそうです。真剣に町のことを考えてきた成果だと思います」

 出雲崎町に対する人一倍強い思い入れを語る小林氏だが、今回も含め9選のうち6回は無投票で町長になっている。担い手不足という地方の構造的な問題もありそうだが、彼が町長を続けていること自体が諦めムードを生み、ライバル登場の芽を摘んでいる面はないのだろうか。

「最後の町長選は平成20年でした。支援者が相手方に回ったりして厳しい戦いを予想していましたが、蓋を開けてみればダブルスコアで勝ってしまった。この時、思ったんです。私はまだ町民に求められているんだと」

 そして、老害批判をこう切り返すのだった。

「だいたいね、私は行動力や実行力さえあれば、その人の青春は何歳になっても続いているんだと思います。年を取ったから町長は無理? 冗談じゃない。生涯現役ですよ。後継者を育てないのかともよく聞かれますが、それは違うと思う。禅譲して自分の思いを継いでもらおうだなんて、今はそういう時代ではありません。だから、『もう小林には任せておけない。俺がこの町の流れを変えるんだ』っていう若い人が出てくることに期待しているところです。あっはっは」

 出雲崎町の老害問題の裏に透けて見えるのは、覇気なき若者の「若害」か。

週刊新潮 2020年1月30日号掲載

ワイド特集「人生の鬼門」より

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