安倍政権最大の危機「カジノ国会」に切り札は… 野党追及の4問題、疑惑の“KISS”
“本当に迷惑”
何より、既に大きな動きを見せたのは、「カジノ疑獄」について。国会開幕当日の20日、1月下旬に予定されていた、IRの認定基準に関する基本方針の決定が、先送りされることが報じられた。
「これには驚きました」
と述べるのは、国際カジノ研究所の木曽崇・所長である。
もともと、IRについて予定されていたスケジュールは、
○2020年1月7日 「カジノ管理委員会」発足
○1月下旬 「基本方針」が決定
○2月以降 方針に基づいて各自治体が業者を公募、選定
○2021年1~7月 自治体が国に開業申請
○7月以降 国が最大3カ所を認定
○2020年代半ば (建設を経て)開業
というものであった。
しかし昨年末、IR誘致を巡る収賄容疑で秋元司・元内閣府副大臣が逮捕された。国会議員の逮捕は実に10年振りのこと。加えて、岩屋毅・前防衛大臣など5名の議員も、同じ企業から金銭を受領した疑いで、特捜部から事情聴取を受けたのは周知の通り。
別の政治部デスクが言う。
「疑惑の高まりで、世論はカジノ開設に硬化。政権寄りの読者が多い読売新聞の調査でさえ、6割が反対との結果が出たほどです。政府はこうした空気を感じ、前のめりとの印象を与えるのを避けるため、とにかくカジノの話題から身を遠ざけたい。基本方針決定に“待った”をかけたのもそのためです」
が、この決定は、今後のIRの行方に大きなダメージを与えそうだ。
現在、国内でカジノの誘致を申請予定、または検討しているのは、7地域8自治体。北から東京都、横浜市、愛知県、名古屋市、大阪府・市、和歌山県、長崎県である。その中でも、大阪と横浜が最有力とされているが、前出・木曽氏は言う。
「基本方針が先送りとなれば、当然、申請、認定、開業も遅れる。となれば、特に大阪にとっては大きな痛手となります。大阪では2025年に万博が開催されます。府や市はそれに合わせてIRを部分的にでも開業できるよう、国の動きに先行して準備を進めていました。しかし、これで部分開業すら間に合わなくなる可能性が大きくなった。これまでやってきたことが無駄になってしまうのです」
実際、橋下徹・元市長も、ネットテレビで、
〈国会議員の意識が低すぎる。今回のことは大阪にとって本当に迷惑。いよいよIRの計画が進んでいくなというときだったからね。世論は見直しをすべきだという意見が多数を占めてしまっている〉
と怒ってみせた。
他方、横浜市では、既に火が点いた反対運動に、ガソリンを注入する格好となっている。
地元記者によれば、
「現在、カジノを推進する林市長は、各区で住民向けの説明会を開き、説得に努めています。しかし、“嘘つき!”などとヤジが飛び、会場は荒れ模様。退場する時も、裏口から出ていく始末です。“カジノ用心”とばかり、火の用心の拍子木を鳴らす人もいて、ちょっとしたイベントになっています。横浜市では、ちょうどこれまで申請期限末とされていた2021年の夏に、市長選挙が予定されています。申請期限が延びれば、反対派はこの選挙で勝利を収め、申請を撤回させることも可能になる。勢いはより増していくでしょう」
運動の中心は、開設予定地・山下ふ頭に多くの会員企業がテナントを構える「横浜港運協会」。会長の藤木幸夫氏は、強面の人柄と、その幅広い人脈から、「横浜のドン」と言われてきた。この藤木氏も、協会の新年会の後の囲み取材で、
「(IR汚職は)私たちには追い風。あれ、全部実態を書いたら、新聞が何ページあっても足りませんよ」
と吼えて見せたのである。
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