東京五輪にボランティアは来る? “有償”バイトとの格差、ボイコット予備軍は

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森会長の古い精神論

 報酬といえば、組織委の森喜朗会長は以前から「私は無報酬」と発言している。新国立競技場の建て替え問題などの責任を追及された際に報酬返上について問われ、「もらっていないから返上のしようもない」と答えていた。副会長らは報酬を受け取っているというから、もらっていて当然だが、前出の高谷氏は、「森会長は受け取っておられません」という。あるJOC理事からは、「報酬を受け取らない代わりに、組織委員会のスタッフたちを慰労する会がすべて森会長の予算で開かれている」との話を聞いた。この点を尋ねると、

「44人だった組織委の立ち上げ当初から800人くらいの規模になるまでは、夏と冬に、ケータリングの食べ物と飲み物でそのような会を開いていただきました。場所は都庁の食堂やイベントホールでした」(高谷氏)

 組織委が定める報酬額表を見せてもらった。20段階あり、第1号は月額10万円、第20号は月額200万円だ。本来なら森会長は年俸2400万円が保証されているのだろう。なぜ受け取らないのか? 「お金のためじゃない」とする森会長の男気も理解できる。もらえば揶揄される懸念もある。しかしスポーツ団体の健全化が急務となるいま、役員らが手弁当でなく有償で役割を果たすべきとの認識が大勢だ。古い精神論に森会長が固執するのは逆効果ではないか。率先して世論の変革を促すのもひとつの選択だ。この機会に、森会長に報酬を受け取るよう提案したい。

 ちなみに組織委員会「報酬規程」第5条に「業務を執行した理事に対して、日当10000円を支給することができる」とある。森会長もこの日当1万円は受け取っている。但しこれも「当該日当は、会長の厚意により、出身母体の異なる職員の一体感を醸成する懇親会などの福利厚生等に拠出いただいております」(同)という。

(2)へつづく

小林信也(こばやしのぶや)
スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。雑誌「ポパイ」「ナンバー」編集部を経て独立。テレビなどでコメンテーターとしても活躍。『子どもにスポーツをさせるな』『「野球」の真髄 なぜこのゲームに魅せられるのか』など著書多数。

2020年1月30日掲載

特集「『東京五輪』に4つの破綻危機」より

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