「大津園児死傷事故」の迷走 やりたい放題の新立被告について被害者の弁護士が語る

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「写真もLINEも全部見せる」と脅迫

 新立被告は保釈中、出会い系サイトで知りあった49歳の公務員男性の連絡先を把握。会ったことはなかったというが、8月27日にLINEを使って脅迫するメッセージを送ったり、男性の勤務先に電話をかけたりしたというのだ。

 日刊ゲンダイDIGITALが10月3日に公開した「園児死亡事故公判中に男性脅す 53歳女性ストーカーの気質」から一部を引用させていただく。

《新立被告は保釈された直後の6月下旬から、49歳の男性公務員とLINEでやりとり。近況を報告したり、写真を送らせていた。ところが次第に嫌気が差したのか、男性は新立被告からのメッセージを既読無視するようになった。すると新立被告は「電話番号を教えて」「話がしたいの」と懇願。これを無視されるとキレ、8月27日以降、何度も「やりとりを全部見せる。それで終わり」というメッセージを送り続けた。それでも返信がなかったため、男性の職場の電話番号を調べ、9月2日と5日の2回、直接電話を掛け、「写真もLINEも全部見せることになるよ」と脅した》

 初公判の新立被告が被害者の激しい怒りを買ったのは前に見ていただいたが、服装が非常識だったことも影響を与えたようだ。同じ日刊ゲンダイの記事から「被害者の知人」の指摘をご紹介しよう。

《初公判では入廷時に被害者の方を見ようともせず、そのままスタスタと被告席に向かい、頭を下げることもなかった。服装はノースリーブに近い、袖がほとんどないヒラヒラが付いたブラウス姿で、髪の毛はきれいにセットされ、『そんなおめかししてどこに行くの』いう感じやった。とても法廷に出てくるような格好ではなく、一瞥もくれずに退廷するなど、重罪を犯した人間の態度には見えなかった》

 新立被告がストーカー容疑などで逮捕された、との一報が石川弁護士の元に入ったのは、弁護団で打ち合わせを行っていた時だったという。

「率直に言って、頭と心で理解するのには時間が必要でした。あまりに予想外のことで、信じられなかったのだと思います。地裁は交通事故とストーカー事件の併合審理を決めました。日程調整がスムーズになるという訴訟手続き上の要請もありましたし、2つの事件が関連している可能性もあったから、と理解しています。真相解明という観点から考えると、私も地裁の判断は正しかったと思います」

 とはいえ、遺族や被害者にとっては、傍聴の負担が増したのは間違いない。

「法廷で事故の詳細と向き合うだけでも、被害者の皆さんは強い心理的苦痛を受けています。真相究明のため、必死に耐えておられるわけです。ところが、更にストーカー事件の審理も加わってしまいました。保釈中の身としては、あり得ない行動であることは言うまでもありません。被害者の皆さんの精神的苦痛は増すばかりでした」(同・石川弁護士)

 被害者にとっては辛い展開だったが、ストーカー事件が新立被告の性格を浮き彫りにした側面もあったという。

「初公判の服装が批判を浴びたのは私も把握していますが、その後は普通の服装でした。態度も変わったことはなかったと思います。ところが、新立被告が事故の詳細や原因を問われる場面になると、『忘れてしまった』と答えることが目立つのです。結局、被告が事故の原因を詳細に説明することはありませんでした。これは被害者の皆さんが望む真相解明の妨げになっている一面があります。そして、こうした被告の態度と、ストーカー事件の発生は関係する可能性があるという印象を持っています」(同・石川弁護士)

現実逃避する被告

 新立被告は出会い系サイトにアクセスしたことを「自分が事故を起こした人間だと知らない人と話がしたかった」と法廷で説明した。

 これを石川弁護士は、「交通事故で多数の死傷者を出した刑事被告人という辛い現実から逃避しようとしたのでしょう。そうした態度は法廷での『忘れた』という説明と似通っていると思います」と指摘する。

「被害者の皆さんは、辛い現実から逃れることは絶対に不可能です。あるご遺族は毎朝、お子さんの遺影に手を合わせます。ある被害者の方は毎日の痛みに耐え、将来の不安を感じておられます。これに対し、被告は法廷でも逃げようとした。被害者が憤りを感じるのも当然でしょう」

 新立被告が法廷で被害者をこれほど傷つけ続けたにもかかわらず、まだ話は終わらない。

 19年12月10日、大津地裁で行われた公判で地検は求刑を行う。「結果は重大で、反省も不十分」などとして禁錮5年6月を求刑、判決公判は1月16日として結審した。

 その約1週間後、新立被告はABCテレビ(朝日放送)の報道番組「キャスト」(平日・15:50)の単独インタビューに応じたのだ。

「番組で新立被告は事故を『私の不注意であることは確か』としながらも、『不運が不運を呼んで、やはり(自分の車ではなく直進車が)、かわいい園児さんの中に突っこんでしまった』と話しました。そして直進車を『せめて減速、あるいはブレーキ……があったら』事故は防げたと不起訴に不満を示しました。ストーカー事件についても『私のほうがストーカーされていた』と主張し、『事故のことがあるから全部言えないという辛さはある』と訴えました。いずれも法廷で全く主張されなかったことばかりでした」(番組を見た記者)

 インタビューはテレビ朝日系列の報道番組で全国放送も行われたが、新立被告が刑期について「わがまま言わせてもらったら、やっぱり子供がいるので、早く、短くなればいいというのはあります、正直」と一方的に希望する部分もオンエアされた。なぜこんな発言をしたのか、誰もが理解に苦しむのは間違いない。

「ABCテレビからは放送前にコメントを求められました。番組で『反省とは全く無関係な言動で、被害者感情を著しく踏みにじる』という私たち弁護団のコメントが放送されましたが、そもそも私たちは『被害者の皆さんのお気持ちを考えれば、放送をしてほしくない』という気持ちがあり、それをABCテレビ側に伝えていたのです」(石川弁護士)

 新立被告のインタビューは被害者にとっては辛いものであり、裁判にも影響を与えた。検察側は判決日に弁論を再開し、番組の内容を審理するよう地裁に要求したのだ。

「判決の日に弁論が再開されるというのは、決して珍しいことではありません。例えば結審後に被害弁済が完了した時などは、弁護側が判決公判での弁論再開を求めます。裁判官の心証が変化し、判決も変わる可能性があるからです。新立被告がテレビカメラの前で話した内容も、裁判官の心証を変える可能性がありました。実際、検察側の要求に、裁判所は弁論再開を決定しました」(同・石川弁護士)

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