宍戸錠さんが語った義妹「ちあきなおみ」との仲 復帰して弟のために歌えよ…
“その日のうちにデキたみたいだ”
「鍈治は明治大学を出ているんだけど、大学で覚えたのは麻雀だけ。卒業して“仕事はどうしょう”というから、日活を紹介したんだよ。“俳優で一つのポジションを作れば、ずっと食えるぞ”って。俺が日活で主演になった頃から、俺の敵役をやりだしたけど、鍈治は日活ではそんなにいい役はやってない。顔が恐いだけだからな。ただ、殴り方の演技も、スポーツも一流だったね。彼は高校の頃は水泳をやっていて、100メートルの競泳をしたら、3メートルぐらい置いていかれたよ。でも、水泳と麻雀以外は全部俺が勝つけどな」
郷鍈治とちあきなおみが結婚したのは78年だが、二人が出会う以前から、宍戸さんはちあきなおみと親しくしていたという。
「俺とちあきの出会いは『元祖どっきりカメラ』(日本テレビ)で共演した時だね。あの番組は平均視聴率が17・9%も取っていたから、“色々な人が出してくれ”と言ってきたけど、その中にちあきもいたんだよ。その時の『どっきりカメラ』の仕掛けは、ペンキ塗り立てのベンチに座ったらどうなるか、ってやつだったんだけども、ちあきはペンキの付いたベンチに座って立てなくなり、スカートをパッと広げたまま、後ろにグワーっと倒れたんだよ。それも全然、平気な顔でさ。それを見て、“こいつは持ってるなあ、使えるなあ”と思ったんだよ。青山の『薔薇屋敷』というバーにいつも行っていたが、石原裕次郎や小林旭、堺正章、そしてちあきなおみも来ていた。ある夜、一人ずつショーをやらせたんだ。やり始めたら裕次郎なんて人にマイクを渡さない(笑)。旭はかん高い声、マチャアキは歌の間にギャグを入れる。でも、歌はちあきがダントツに上手かったね。ちあきの歌の上手さはハンパじゃないんだよ。好き嫌いはあると思うけど、俺は美空ひばりよりも上手いと思うね。ありとあらゆる流行歌、英語の歌も含めて、ちあきにかなう歌手はいないよ。リズム&ブルースでもゴスペルでもないんだけど、ちあきは心にその二つの精神を持っている。びっくりするぐらい上手い」
そんなちあきなおみと郷鍈治を引き合わせたのは、宍戸さん自身だという。
「73年に『くるくるくるり』(日本テレビ)というドラマで俺とちあきは夫婦役をやった。あの頃は、ちあきとは本当によく喋っていた。ある時、ちあきが“誰かいい男を紹介してくれない”というから、“だったら、弟の鍈治はどうだ”と言ったんだよ。そしたら、ちあきは、“ああ、それいい!”って喜んでさ。俺はそれを見てピンと来たね。(郷を)狙っていたんだよ。その頃、鍈治は離婚したばかり。子供もいなかったから、“ちあきのことどう思う”って聞いたら、“悪くない”って言うんだ。“じゃあ、ちあきに会わせる”といって赤坂の『ポイント・アフター』という店で引き合わせたんだよ。二人はその日のうちにデキたみたいだったな」
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