少し多すぎやしないか5本の「医療ドラマ」と「東京五輪」のただならぬ関係
民放プライムタイム(午後7時~同11時)で1月から3月まで放送される冬ドラマに、医療ドラマが多いのは知られている通り。その数、12枠中5作品。水曜日と日曜日を除くと、医療ドラマは毎晩放送されている。秋ドラマ(10月~12月)では「ドクターX」(テレビ朝日)だけだったのに、一体どうしてなのか? その背景を探る。
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実のところ、医療ドラマが多いのは日本ばかりではない。アメリカも同じ。人気を背景に放送が長期化した「ER緊急救命室」(1996~2009)や無頼派医師が主人公の「ドクター・ハウス」(2004~2012)、薬物依存症の看護師を中心に物語が展開する「ナース・ジャッキー」(2009)など、挙げ始めたらキリがない。
どうして国内外で医療ドラマは多いのか? その答えを以前、TBS出身の演出家・鴨下信一さん(84)が解き明かしてくれた。鴨下さんは「岸辺のアルバム」(1977)や「ふぞろいの林檎たち」(1983)を手掛けた名匠である。
「医療ドラマは便利なんですよ。患者を通し、どんなことでも描けてしまいますから。例えば、患者とその家族の関係を使って、『家族とは何か』が描ける。若い患者とその恋人の関係を用いれば『愛とは何か』も表せる」(鴨下さん)
なるほど、身寄りのいない老人を患者にすれば、高齢者の孤独をテーマに出来る。逆に子供を患者にすれば、少子化時代下の子供に対する親の愛情などが描ける。
「ドクターX」でも実際にそんなエピソードがあったが、政治家の患者を登場させると、政治問題までも語れる。恋愛を描く場合、医者同士や医者と看護師などでも描ける。確かに医療ドラマは便利な存在に違いない。
1話完結でさまざまな人間ドラマを描けたから、「ER緊急救命室」も13年続けられたのだろう。病名や症例、治療法を変えただけでは長くはやれないはずだ。
医療ドラマは視聴者ターゲットの幅も広げやすい。出演者に男女の新進からベテランまでそろえて、恋愛から生死問題まで多岐にわたるテーマを扱えばいいのだから。
とはいえ、いくら便利でも今年の冬は医療ドラマが多すぎるだろう。12枠中5作品。3分の1以上なのだから。連日のように白衣姿を見せられたら、誰だって食傷気味になってしまうのではないか。これでは作品への正当な評価が得られにくくなる恐れもあり、勿体ない。
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