西野タイランドの挑戦 西野朗監督がU-23アジア選手権で見せた勝負師の顔
西野監督と森保監督を比較すると……?
短期間ながら、西野監督はチーム作りの方向性も見出した。そして1月、地元バンコクでU-23アジア選手権が開催された。
上位3チームに東京五輪の出場権が与えられる重要な大会でもある。そして西野監督率いるタイは初戦でバーレーンを5-0で葬る好スタートを切った。
初戦の大勝で期待の高まったタイの第2戦の相手は、グループAで本命視されているオーストラリアだった。前半24分に先制点を奪ったものの、前半のうちに同点にされると、後半31分に決勝点を許して1-2の逆転負けを喫した。
惜敗に終わったが、西野監督は手応えを感じていたようだ。
「予想以上にホスト国としての緊張感と、期待され、準備してきての(現状)勝点3ですが、選手のパフォーマンスは予想以上に出し切っている。積極的にチャレンジしているし、次のステージに行けるかどうかの勝負が次にある。選手の状態を確認してコンディションの高い選手を起用するのは間違いない」
タイの第3戦の相手は、ここまで2試合連続してドローのイラクだ。この試合を勝てばもちろん、引き分けでもタイは初のグループリーグ突破となる。
その重要な一戦で、西野監督はスタメンを7人も入れ替える大胆な起用を見せた。4-2-3-1のCBと右SB、ボランチの2人に加え1トップとトップ下、そして右MFの7人だ。
攻守の中心選手をそっくり代えたと言っても過言ではない。その理由を、次のように説明した。
「(1月8日)初戦のバーレーン戦で、チームパフォーマンスが良かった。第2戦のオーストラリア戦は(1月11日で)中2日。それでもチームはリカバーできた。初戦と同じメンバーでオーストラリア戦に勝負を賭けた。しかし終わってみれば1、2戦で選手は疲労し、ケガ人も出た。(そして1月14日の第3戦である)イラク戦では、バックアップの選手を中心に、いい準備をしてくれていたので送り出しました。勝負は後半と考えていましたが、前半をよく持ちこたえてくれた」
試合は前半6分にPKからタイ代表のジャルンサックが先制したものの、後半4分に同点に追いつかれる。
すると西野監督は後半11分にキープ力のあるFWベン・デーヴィスに代え本来の1トップであるスパチャイ・ジャディードと、トップ下のスパチョク・サラチャットを投入する2枚代えを決断した。
さらに終盤の39分にはレギュラーボランチのカマンを本来のポジションで起用して逃げ切りに成功した。
森保一監督も第2戦のシリア戦はスタメンを6人代えた。その理由を「フレッシュな選手をこの試合でプレーしてもらうことでチームのパワーにしたかった」と振り返った。
だが、大会初出場の町田浩樹は先制点のきっかけとなるPKを与え、森島司と松本泰志、上田綺世はほとんど存在感を示すことはできなかった。
実戦を経験させることで成長を期待しつつ、嫌なムードを変えて勝利に結びつけたかったのだろう。しかし「二兎を追う者は一兎をも得ず」の喩え通り、日本は2戦目にしてグループリーグ敗退が決まった。
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