南場智子(DeNA会長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

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 ネットオークションから始まり、ゲーム、遺伝子検査など多方面に事業を展開、インターネットの拡大とともに日本を代表するIT企業となったDeNA。その陣頭指揮を執る彼女は、20周年の節目を迎えた昨年、起業家支援の「100億円ファンド」を設立した。彼女の次なる挑戦とは――。

佐藤 昨年はDeNA創業20周年でした。

南場 はい。この20年は、インターネットが世界の隅々まで変えていった20年でもあります。インターネット企業の経営者として、その変化を間近に見ることができたのは、本当に幸運だったと思います。人のつながり方から、余暇のすごし方、情報の発信・収集の仕方、仕事の仕方まで、インターネットが全部変えてしまった。

佐藤 本当にそうですね。私はだいたい月に400字詰原稿用紙で800枚から千枚近く原稿を書いているのですが、インターネットの環境がなければできませんね。

南場 ひゃー、すごいですね。

佐藤 南場さんはそうした時代の真ん中を歩いてこられたわけですが、マッキンゼーという有名な経営コンサルティング会社にいて、よく起業されましたね。

南場 私はマッキンゼーの仕事が天職だと思っていましたし、そこで働くことがとっても幸せだったんです。でも、ほんの一瞬、魔が差してしまった(笑)。会社の後輩2人を連れての起業で、彼らを一時は奈落の底まで付き合わせてしまいました。

佐藤 創業してすぐに日本オラクルや日本IBMといった会社からも優秀な技術者が集まってきた。彼らが会社を辞めてまでやってきたのはなぜでしょう。

南場 やっぱりここでやっている挑戦が面白く思えたんじゃないでしょうか。

佐藤 最初はネットオークションでしたね。

南場 そうです。まだヤフーオークションはありませんでした。でも開発に手間取っているうちに、ヤフーが始めてしまった。彼らはアメリカにシステムを持っているのでゼロから開発する必要はないし、ポータルサイトもあるから、ユーザー獲得も楽です。でも私たちは何もないところからの出発でしたので、本当に大変でした。

佐藤 その後、ネットショッピングに展開されて、次のサービスで大ヒットする。「モバゲータウン」が2006年ですね。

南場 モバゲーは携帯電話のSNSで、ユーザーがモバゲーのサイトに集まって、アバター(ネット上の自分の分身)を作ってゲームを楽しんだり、共通の話題で盛り上がったりするんですが、これがうまくいった。会員が5千万人以上になりました。

佐藤 ソーシャルゲームという新しい分野を作ったわけですが、ゲームについては、いろいろ批判もあります。

南場 はい。ソーシャルゲームというと、よくないイメージを持たれる方もいる一方で、やはり人のつながり、それは仲間であったり、競争相手であったり、対等のチームであったりするんですが、そうした人のつながりを作っていくという点では、インターネットの特性を生かしたゲームなんですね。私も自分で楽しみます。

佐藤 依存症が問題視されますが、どんなところにも依存症の問題はあります。それを是正する仕組みをつくればいい。

南場 そうですね。青少年を守るということでは、多大な投資も努力もしてきましたし、成果も出していると思います。その意味ではソーシャルゲームは進化しているんじゃないかと思いますね。

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