根尾昂、藤原恭大、吉田輝星…甲子園のスターは「プロの壁」を乗り越えられるか?

スポーツ 野球

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 2月1日から始まるプロ野球のキャンプに向けて、新人選手の合同自主トレが連日ニュースを賑わせる時期となった。昨年のこの時期、話題の中心となっていたのは、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)、吉田輝星(日本ハム)といった甲子園を沸かせた高校卒ドラフト1位選手。プロ入り1年を終えた甲子園のスター達は、2年目にどの程度のパフォーマンスを見せてくれるのか。ルーキーイヤーの成績とチーム事情などから展望してみたい。

 まず3人の昨年の成績は以下のような数字となっている。

根尾昂
一軍成績:2試合 2打数0安打0本塁打0打点0盗塁 打率.000
二軍成績:108試合 410打数86安打2本塁打33打点9盗塁 打率.210

藤原恭大
一軍成績:6試合 19打数2安打0本塁打2打点0盗塁 打率.105
二軍成績:82試合 300打数68安打4本塁打21打点16盗塁 打率.227

吉田輝星
一軍成績:4試合 1勝3敗0セーブ0ホールド 防御率12.27
二軍成績:18試合 2勝6敗0セーブ0ホールド 防御率4.35

 藤原は、高校卒のルーキーとしてはチームで54年ぶりとなる開幕スタメン出場を果たすと、その試合でいきなりプロ初安打をマーク。吉田も6月に一軍初登板初勝利という華々しいデビューを飾ったものの、トータルで見ると3人ともプロの壁に苦しんだことがよく分かる結果となった。シーズン後半はショートのレギュラーに定着して一軍でも40安打を放った小園海斗(広島)や、育成1位の指名ながらいきなりイースタンで首位打者を獲得した山下航汰(巨人)と比べると寂しい数字であることは間違いない。また、三人ともシーズン中に故障に見舞われており、まだまだプロの一軍で戦える体になっていなかったということも言えるだろう。

 技術的な面では、根尾と藤原はやはりバッティングの課題が大きい。打者の手元で変化するプロの変化球に対応しようとしてポイントを近くに置こうとして、速いストレートにも対応できないという“悪循環”に陥っているように見えた。一方の吉田も課題となる変化球のレベルアップに取り組んでいたようだが、そのことで持ち味であるストレートの良さが生かしきれていなかった。このあたりが二年目以降に克服すべき点と言えるだろう。
 そんな中で三人の現状とチーム事情を考えると、一番チャンスが多くなりそうなのは吉田と言えるだろう。昨年最多勝を獲得した有原航平がメジャーへの移籍希望を表明しており、先発投手の底上げはチームの大きな課題である。ドラフトで3人の社会人投手を獲得したが、右の先発候補は決して豊富とはいえず、吉田にかかるチームの期待は大きい。高校3年時の良かったころのストレートの勢いが戻ってくれば、ある程度の勝ち星は計算できるだろう。

 一方の根尾と藤原は、今年も一軍で結果を残すのは難しいと言わざるを得ない状況だ。中日のショートは京田陽太が完全に安定勢力となり、サードの高橋周平も本格化してきている。現実的には外野転向が濃厚だが、大島洋平、平田良介、福田永将を押しのけて起用するのはなかなか勇気がいるだろう。

 藤原がいるロッテの外野事情はさらに過酷だ。荻野貴司や角中勝也、清田育弘、マーティン、岡大海、加藤翔平、平沢大河などが並ぶ中に、FAで福田秀平、ドラフトでも高部瑛斗を獲得して、ますます層が厚くなったのだ。また本職はサードの安田尚憲もレアードがいるため、出場機会を増やそうとして外野で起用することも十分に考えられる。そんな中で一軍のスタメンを勝ち取るのは簡単なことではないだろう。

 ちなみに、高校卒の野手で比較的早くレギュラーに定着した坂本勇人(巨人)、山田哲人(ヤクルト)、鈴木誠也(広島)、村上宗隆(ヤクルト)の一軍定着前年の二軍成績は以下のようになっている。

坂本勇人
07年(1年目):77試合 302打数81安打5本塁打28打点5盗塁 打率.268

山田哲人
12年(2年目):40試合 147打数43安打0本塁打8打点4盗塁 打率.293

鈴木誠也
14年(2年目):50試合 183打数52安打4本塁打19打点8盗塁 打率.284

村上宗隆
18年(1年目):98試合 365打数105安打17本塁打70打点16盗塁 打率.288

 坂本と村上はこの成績を残した翌年、山田と鈴木は2年後に完全な一軍のレギュラーとなった。全員が2割台後半の打率をマークしており、二軍では抜けた存在だったということがよく分かる。この数字を見ても、根尾と藤原が今年いきなり一軍に定着する可能性は低いと言える。まずは怪我なく一年を通して二軍で結果を残し、シーズン終盤に一軍の出場機会を増やしていくというのが現実的なプランではないだろうか。プロ二年目は翌年に大きく飛ぶための本格的な準備期間。ファンもそう考えて温かい目で見守ってもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月20日掲載

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