「リアル万引き家族」被害総額400万円で逮捕、一家4人で車上生活
ラブホテルにも宿泊
まもなく一家は盗みに手を染め始める。
「うちがヤラれたのは去年の4月28日でした。夜の8時に店を閉めた後に、忍び込まれたみたいです」
被害を訴えるのは、本庄市に店舗を構える「オザーク・ルアーショップ」の店主。奇遇にも映画と同じ釣具店だ。店主が取り付けた三つの南京錠はペンチで切断され、アルミ製のドアの一部には穴が開けられていた。
「この穴から手を突っ込んでドアノブの内カギを回したのでしょう。犯人はそのまま倉庫に侵入して手あたり次第に商品を持ち出している。ブラックバス釣りに使う釣竿が約30本、それ以外にルアーも100個以上なくなっていたので、被害総額は75万円ほど。通報で駆けつけた刑事さんによれば、店内には2人の足跡があったとか。ドアは壊されましたが店内に荒らされた形跡は見当たらなかった。店の隣に住む人に聞いても不審な物音はしなかったと言ってましたね」(同)
夜中にこれだけ大量の商品を盗み出しながら、周囲に気取られない辺りは“ウデ”の良さを窺わせる。さらに、店主は事件直前にも一家を見かけていた。
「3月下旬に千本桜で知られる小山川の側道をサイクリングしていたら、ルアーを使ってバス釣りをする2人組の男がいましてね。しかも、翌週も、その次の週も同じ場所で釣っている。それで“釣れますか?”と尋ねたら“ええ、釣れますよ”と。あまり話しかけられたくなさそうな様子でした。ただ、近くにトヨタの黒いステーションワゴン“アルテッツァ”が停車していて女性がふたり乗っていた。この辺りでは珍しく群馬ナンバーだったので覚えていたんです。実は、うちのお客さんも付近の池で釣りをする同じ家族を見たのですが、その時は魚籠(びく)を持っていたとか。ふつうブラックバスは釣っても食べないんですが……」
「家族」は池のほとりで車上生活を続け、「盗んだ七輪で魚やチャーシューを焼いて口にしていたそうです」(先の記者)。明日をも知れぬ境遇のなか、満開の桜の下でただ釣り糸を垂らす日々。時折、カネを手にすると、ささやかな贅沢か、本庄市のラブホテル「ロコズリゾートハワイ」に向かった。従業員が言う。
「オイル漏れが酷い、群馬ナンバーの黒いトヨタ車はよく来ていましたよ。“20時間=3980円”のサービスタイムに、若い男女と年配の男女に分かれて2部屋を利用するんです。掃除に入ると手つかずのスーパーのお弁当やお茶が3、4人分積まれている。とても2人では食べきれない量だから、従業員の間では“万引きでもしてるんじゃないか”と囁かれていた。そうしたら、案の定でね」
昨年7月、ホテルに4、5台の覆面パトカーが押し寄せ、20人を超える捜査員が家族の泊まる部屋に突入。4人は暴れることなく、おとなしく連行されたという。
五輪開催に沸く国際都市「東京」のすぐそばに、行き場を無くした「万引き家族」の風景が確かにあった。
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