国会に乱入、議員へ暴行も…反文在寅の急先鋒「太極旗部隊」の正体
疎外された老人が朴槿恵弾劾に憤慨するわけ
この怒れる人々は何者なのか。現地メディアでは、社会が急速に発達するなかで見下され疎外感を味わっていた老人たちがその正体だとする分析が見られる。
太極旗部隊が崇拝する朴槿恵の父親・朴正煕は、強硬な反共保守を掲げる一方、貧しかった韓国に経済成長をもたらした大統領だ。老人世代の多くは、自分もその発展に寄与したとの自負心を抱いている。そんな太極旗部隊の老人にとって英雄の娘=朴槿恵の弾劾・罷免は、自分たちが卑下されたように感じられるらしい。
ネットではまた従来の保守勢力が、疎外感と鬱憤を抱く中高年~高齢者の愛国心を煽り立てる。太極旗集会に参加するようになった老父がネットで「文在寅が不正選挙を行った」などのフェイクニュースに没頭している、という例も複数報じられている。あたかも日本で現在裁判が続いている「大量懲戒請求事件」――荒唐無稽な「愛国保守的」ブログに感化された中高年~高齢者たちの騒動を思い起こさせる話だ。
国会乱入騒ぎが占う自由韓国党の将来
2019年12月16日、韓国の国会議事堂が異様な騒ぎに包まれた。自由韓国党が国会前で開いていた文政権糾弾集会の一部参加者が、議事堂への乱入を試みたのだ。集まっていたのは同党の党員、そして保守団体関係者などの支持者=太極旗部隊だった。
デモが日常茶飯事の韓国でも国会議事堂への乱入は異例であり、騒ぎは深刻な事件として報じられた。興奮した参加者は警察や取材記者に激しい暴言を浴びせ、通りかかった与党議員らに暴行を加えてもいる。そして議事堂の入り口前に陣取った参加者を、たしなめるどころか激励していたのが、自由韓国党の黄代表だった。
保守派の返り咲きには国会内の少数勢力を結集することが不可欠だが、政治家歴の浅い黄代表はこうした「場外闘争」にばかり明け暮れていると評されている。また保守派でも中道に近い層は朴槿恵の弾劾・罷免を支持しているが、黄代表とその支持集団は太極旗部隊と同じ「親朴派」だ。だが世論の大勢はいまも朴槿恵を忌み嫌っており、親朴派は国民から孤立せざるを得ない。そうしたなか、保守系の少数政党が自由韓国党との連帯を見限る動きも見られ始めた。今年1月には国会議員8人を擁する中道保守の「新しい保守党」が、活動を始めている。
韓国では今年4月、4年に一度の国会議員選挙が行われる。文政権の今後を決定づける重大な節目だ。極右勢力といわれる太極旗部隊に同調する自由韓国党に、どのような勝算があるのか。文政権の敗北を待ち望む日本メディアにとっても、楽観視できない状況といわざるを得なさそうだ。
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