ゴーン容疑者にとって「レバノン」は逃亡先として最適の国、世論に期待するのも無駄

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往時は「中東のパリ」

 ツイッターに「レバノン」と入力すると、「【悲報】日本人の94%、レバノンがどこにあるか分からないwwwwwwwwwww」とのツイートが表示される。もちろん《94%》は冗談だろうが、思わず笑ってしまう方も少なくないはずだ。

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 1月1日、全国紙はゴーン逃亡のニュースを一斉に1面で報じた。毎日新聞が掲載した記事「日産:ゴーン被告、海外逃亡 保釈中『今レバノン』」の冒頭をご紹介しよう。

《金融商品取引法違反と会社法違反に問われている日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)は30日(日本時間31日)、米国の代理人を通じて「私は今レバノンにいる」との声明を出し、日本を出国したことを明らかにした。前会長は海外渡航禁止を条件に保釈を許可されており、東京地裁によると条件は変更されていない。検察側、弁護側とも出国を把握しておらず、無断出国して国外逃亡を図ったとみられる》(註:デイリー新潮の表記法で引用した。以下同)

 レバノンという国名が日本の新聞1面に掲載されることは稀だろう。テレビも記者が首都のベイルートからリポートを行ったが、これも珍しいことに違いない。

 そして我々が痛感したのは、レバノンという国についてほとんど知識がないことではなかっただろうか。

 ちなみにレバノンの場所だが、地中海の東岸に位置している。国境を接するのはシリアとイスラエルだ。1975年から90年にかけて断続的に発生したレバノン内戦を覚えている方もおられるかもしれない。

 今後、ゴーン被告のニュースを見る際、「これだけは知っていると理解が深まる」という観点からの解説を、中東研究家の佐々木良昭氏に依頼した。

 佐々木氏は1974年から76年までレバノンに居住した。終盤こそ内戦で身の危険を感じることもあったというが、内戦前の首都ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれる美しい街だったそうだ。

「1920年から43年まで、レバノンはフランスの植民地でした。主要産業は観光。海も山もリゾート地が豊富、古代フェニキア人の遺跡も見事なものが現存し、世界遺産に指定されたものもあります。砂漠がなく、水が豊富なこともあり、料理もワインも素晴らしい。内戦前のベイルートには高級ホテルが建ち並んでいたものです」

「中東のパリ」が内戦で瓦解したのは想像に難くないが、ゴーン被告の逃亡を伝えるニュースを見ながら、「ベイルートも意外に都会だな」と思った方はおられないだろうか。これには要注意だという。

「テレビは復興した場所しか映しません。レバノンという国全体で見ると、内戦による破壊から立ち直っていないところはたくさんあります。さらに政治的な混乱もいまだに続いているのです」

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