新幹線無差別殺人犯「小島一朗」独占手記 私が法廷でも明かさなかった動機

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警察との攻防

 3月21日の朝、木曽署の警察官が3人来た。最初は友好的に職務質問が始まった。名前は? 住所は? 職業は? 家族は? どう生活している?

 雨の中、この東屋から出ていくことを迫られるが、断った。誓約書を書く。確か内容は「2018年の3月19日から4日間、雨が降り続きますが、私は危険を承知でここに居るので、何があっても誰にも責任を問いません」だ。

 これを役所の人が見る。はねつけられた。警察は態度を変えて、友好的ではなくなった。私は雨が止んだら出ていく、と言ったが、警察官はいますぐ出ていけという。その後は、

「出ていけ、邪魔だ、迷惑」

「断る。雨が止んだら、出ていきます」

 といったやりとりだ。

「雨に濡れることだけではない。地面が濡れていたり視界が悪く危険だから、出ていくことはできない。晴れたら、出ていきます」

「上にある森林鉄道が展示されている屋根の下で雨宿りをしたらいい」

「ここが危険なら、そこも危険である。私は夏の台風もここで過ごしたのだ。ここは経験的に、相対的に安全である。私の命に一番責任を持っているのは私だ。どうするかは私が決める」

「ねざめホテルに泊まったらいい」

「そんなことに遣うお金はない。私はホームレスなのだから。いっときのために、千秋の苦しみを味わう訳にはいかない。私の人生はこれからもまだまだ長いのだから」

 さらに私は言った。

「私には生存権がある」

「この場合はあたらない」

「ホームレスが立ち退きを迫られた時に、断る理由としてよく使われるのが生存権だ。だから私も生存権を主張する。この雨の中、屋根のある下から立ち退かそうとするのは人道にもとる。血も涙もないのか」

 警察官が私の荷物を勝手に取って、挑発してきた。

「返してほしかったら、ここまでおいで」

「ホームレス自立支援法第11条に基づいて、まず社会の福祉を尽くしてから、法令の規定に沿って排除してください。生活保護の話をして、それでも私が受け入れなかったら、行政代執行してください。いついつまでに立ち退けと書面で告知してください」

「それは警察の仕事か」

「警察の仕事でないとしたら、私の相手をするのは貴方の仕事ではない。貴方の仕事は、その仕事をするところへ、私のことを引き継ぐことだ」

「お前をどかすのが警察の仕事だ」

「私には生存権がある。私は生きた人間であって、しかも日本国民です。基本的人権に守られています」

「権利、権利ばかり主張して義務を果たしているか?」

「生存権、その基本的人権は生まれながらにして持っている権利であって、何かの義務を果たさなければ与えられない権利ではない。貴方は警察官でしょう。公務員には憲法を守る義務がある。憲法は基本的人権を保障している。貴方は警察官としての立場があるのだから、私の基本的人権を守る義務があるんだ」

「なら、制服を脱いだらやっていいんだな」

「どうして制服を脱いだらやっていいことになりますか。制服を脱いだら法律を守らなくてもよいのなら、どうして制服を着ていない私が法律を守っていないからといって咎められるのか。また私が法律を守っていないから貴方も法律を守らなくてもよいと言うなら、貴方が法律を守っていないから、私も守らなくていいことになる。貴方が私に法律を守らせたいのなら、まず貴方が法律を守らなければならない」

「口だけは達者だな」

「達者だということは私が正しいと認めるんだな。なら、法の手続きに沿って排除してくれ」

「よく分からないけど、間違っていると思うよ」

「貴方は自分に自信がないようだが、ハッキリ言おう。私は正しい」

 そう言ったら、警察が私の手に持っていた自転車のサイドバッグを無理矢理奪い取った。その時に私の右手の人差し指から薬指までの3本にある爪がめくれて出血した。

「ううっ」

「大丈夫か。病院に行くか?」

「断る」

 警察の行動はエスカレートしてくる。職務質問で注意を引くために肩をつかんだりすることは認められているが、どついたり、ゆさぶったり、引き倒したりすることは、違法ではないだろうか。

 また、私は自分の荷物をすべて一度見せているのだから、突然、荷物を奪い取ることも違法ではないのか。しかもその目的は中身を見ることではなく、私を挑発することにあるのだ。

 雨が一時的に止んだのと、警察官が怖かったので、その日は上の森林鉄道が展示されている屋根の下に移動した。

「もう入らないと約束しろ」

「しばらくは入りません」

 19時、再び裏寝覚の東屋に戻った。

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