IR汚職で逮捕の秋元司議員が披露していた土地錬金術 口銭稼ぎの達人は単なる守銭奴

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「反中国」だったはずの秋元容疑者

 それでは、いよいよフェイスブックをご紹介しよう。当該記事の全文を転載させていただく。掲載されたのは12月25日、つまり逮捕当日だ。

〈秋元司衆院議員が逮捕された。

 この一件は、中国企業(500ドットコム)が外為法を犯して持ち込んだ数百万円を秋元議員に渡した贈収賄事件として立件されることになりそうだが、事件の舞台は沖縄で行われたIRをめぐるシンポジウムだといわれている。

 沖縄でシンポジウムが開催された経緯についてはおおよそ把握している。中国・台湾の沖縄における窓口となっている元自治体議員の有力者が秋元氏の元政策秘書にシンポ開催を持ちかけ、その元議員と関係の深い県内ゼネコンがバックアップするかたちでシンポが実現したという話だ。要するに、沖縄の関係者が秋元氏と500ドットコムをつなぐ役割を果たしたことになる。中国から持ち込まれた現金の授受も沖縄で行われた可能性がある。現金の一部は沖縄の関係者にも渡っているという情報もある。

 大学教員時代、ぼくは秋元氏の母校である大東文化大学(大東文化学園)の理事を務めていたが、秋元氏も卒業生枠の理事で(現在も理事)、会議ではなぜか隣席になることが多かった。今だからいうが、卒業生理事はおしなべて不動産取引やミニ開発に関する知識が豊富で、法規についてはもちろんのこと、どこで誰が新たなミニ開発を行うかという情報にも精通していた。卒業生理事のなかには教員や僧職の人もいたが、ほぼ例外なく「不動産取引情報の達人」であり「口銭稼ぎの達人」だった。秋元氏もその1人である。

 彼らの話を聴いていると、「お金というのはこうやって作るものなんだ」と感心する一方、その話で盛り上がる理事諸氏のなかにいると、胸くそが悪くなることもあった。大学は教育研究の場であって「不動産でどうやって儲けるか」の情報を交換する場ではない。「そういう話はよそでやってくれよ」と秋元氏に苦言を呈したこともあった。

 政治家が儲けることがいけないというのではない。「儲けたいという欲望」が、規範遵守の精神と目的意識に裏打ちされていなければ、その人はたんなる守銭奴である。口銭稼ぎが高ずると規範遵守の精神と目的意識は失われ、金銭欲の渦のなかに呑みこまれて、肝心なことがおろそかになる。

 秋元氏がそうだったとはいわないが、IRを主管する副大臣だったのだから、普通の議員以上に身を律してことに臨むべきだったと思う。もともと「反中」だった秋元氏が、中国共産党の息のかかった中国のベンチャー企業からカネをもらって便宜を図るという実に情けない話になるかもしれない。容疑の段階だからまだ何ともいえないが、東京地検特捜部が乗りだしている以上、秋元氏の脇の締め方は甘々だったと考えて差し支えないだろう。

 こんな状態だから、IR事業には今後相当な逆風が吹くだろう。多くの国民は、「IR事業=カネに執着する守銭奴の群れ」というシンプルな図式を好んでいる。秋元議員は、その図式に見事にあてはまるような「尻尾」を掴ませてしまった。こういう事件を立件するのは久方ぶりだから、特捜部も張りきっている。国民のIRへの反感は間違いなく増幅されるだろう〉(註:引用文はデイリー新潮の表記法に合わせた。以下同)

「あそこの地価は上がる

 筆者が秋元容疑者と理事会で顔を合わせていたからか、記述が具体的だ。そのため「不動産取引情報の達人」、「口銭稼ぎの達人」という指摘に説得力がある。おまけに贈収賄の舞台となった沖縄に、筆者が深い知見を持っていることが行間から伝わってくる。

 それもそのはず、この記事は『外連(けれん)の島・沖縄――基地と補助金のタブー』(飛鳥新社)や、『沖縄の不都合な真実』(新潮新書:大久保潤氏との共著)の著者である篠原章氏が執筆したものなのだ。

 篠原氏の専門は財政学で、かつて大東大の環境創造学部で教授を務めていた。ご本人に当時の状況を振り返ってもらおう。

「私は環境創造学部の学部長に就任して理事になりました。秋元氏が参院選で落選した頃で、民主党政権の時代でしたね。すでに彼は理事でしたので、理事としては先輩だったことになります。大東大卒の国会議員は珍しいため、理事に就任したわけです。大東大の理事会には、こうした『卒業生枠』があり、様々な世界で活躍した人たちが参加していました。そして、どういうわけか卒業生理事は、投資や利殖といった分野に知識が豊富な人が多く、秋元氏もその一人だったのです」

 篠原氏によると、卒業生理事に就任するような「地方の名士」が大儲けするための投資先は土地がメインになるという。地価の動向によっては、望外の稼ぎも手にすることができる。地価上昇時には、他の投資先、例えば株式などよりはるかに高い儲けを手にすることができる。

 民主党が政権交代を実現したのは09年。鳩山由紀夫氏(72)が内閣を発足させ、翌10年の参院選で秋元容疑者は落選する。この頃、東京23区の住宅地における平均地価は微減が続いていた。篠原氏が秋元氏とともに理事を務めていたのは、地価が底値を探るような動きを見せていたこの時期のことで、地価上昇が見込まれる土地を安価に取得すれば近い将来大儲けすることのできる絶好の投資機会でもあった。

 実際、14年頃から地価は上昇に転じていく。今の都内なら“バブル”と評されるほど地価が高騰した地区が存在するのはご存知の通りだ。振り返ってみると、確かに土地投資に追い風が吹いていた時期だったのだ。

「フェイスブックにも書きましたが、なぜか理事会で秋元氏と席が隣になることが多かったんですね。ですから『あそこの土地は地価が上がる』とか『あそこで再開発が始まるらしい。一枚、噛んでおいたほうがいい』という秋元氏の発言は、嫌でも耳に入りました。民主党を打倒し、自分たち自民党が政権を奪取すれば、日本経済は好転し、地価も上昇に転じる、という読みもあったのかもしれません」

 篠原氏は「私大経営に資金が必要なのは事実」と理解も示す。理事として大学経営に参画している以上、ある程度なら利殖話も容認できるが、秋元氏らの関心は大学経営ではなくおもに私益にあるように思えた。篠原氏には、理事たちが儲け話に興ずる姿が異様なものに見えたという。

「私大経営において、例えば文部科学省から補助金や助成金を得られる理事、土地投資で稼げる理事が評価される側面は否定しません。とはいえ、大学は第一に教育の場でしょう。秋元氏などには、もう少し理事会では土地投資の話を控えてもらえないかと依頼しましたが、その意図は理解できなかったようです」(同・篠原氏)

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