小池知事がこだわる都電荒川線の愛称問題 全然浸透しない「さくらトラム」は第二のE電

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なぜ固執するのか

 都電荒川線に“さくらトラム”という愛称を付してから、東京都交通局は“さくらトラム”周知を積極的に進めている。

 あまりにも強引な東京都の姿勢は、かつて国鉄から民営化したJR東日本が国電をE電へと改めた姿と重なる。E電は、いまやJR東日本の黒歴史として封印されつつあるが、東京都交通局も同じ轍を踏む可能性が高いと言わざるを得ない。それでも、東京都交通局は“さくらトラム”を翻す気配をいっこうに見せない。そして、“さくらトラム”の使用開始から半年後には、都電荒川線の駅ナンバリングに「SA」を採用した。

 駅ナンバリングとは、昨今はJRや地下鉄などの鉄道事業者が積極的に導入を進め、駅をアルファベットと数字で表す制度のことだ。例えば、JR山手線の東京駅は「JY01」、渋谷駅は、「JY20」と表される。JYのJはJRのJ、Yは山手線のYだ。

 都電荒川線の駅ナンバリングは、通常だったらTodenのTとArakawasenのAでTAとなるのが妥当だろう。しかし、都電荒川線の駅ナンバリングはSAに決まった。これは、SAkura-tramから借用されている。SAが都電荒川線を表していることは、さすがに沿線住民でもすぐには気づきにくい。明らかに、強引な駅ナンバリングと思われても仕方がない。

 東京都がそこまで力を入れる“さくらトラム”という愛称だが、地域住民や利用者に浸透しているようには思えない。東京都交通局が発行するパンフレットや冊子を除けば、“さくらトラム”という愛称を目にする機会は、ネットニュースが「誰も呼んでいない愛称」「実用的ではない愛称」の例として取り上げるぐらいだ。それほど実態とかけ離れている。

 しかし東京都は“さくらトラム”を使い続ける。そこまで、“さくらトラム”に固執する理由は何なのか? 東京都交通局の広報担当者や現場職員に、私は「“さくらトラム”を考え直すことはないのか?」「なぜ、そこまでこだわるのか?」と繰り返し質問してきた。

 しかし、いくら訊ねても担当者からは「一度決めた名前だから、簡単に戻すことはできない」という消極的な答えが返ってくるだけだった。

 小池百合子都知事は、2016年都知事選の出馬時に掲げた“国立競技場の工費”“築地市場の移転”のほか、“7つのゼロ”を公約として掲げた。それらの公約はことごとく撤回・未達成だが、 公約ではない“さくらトラム”は頑なに撤回しない。

 まったく盛り上がらず、話題にもされない東京都の“さくら”問題。2020年は“さくらトラム”の愛称が決定してから最初の都知事選を迎える。小池都政がごり押しした“さくらトラム”に、沿線住民や鉄道ファンはどんな審判を下すのか?

小川裕夫/フリーランスライター

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月5日掲載

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