映画「パラサイト 半地下の家族」が浮き彫りにする韓国社会の悲しい現実

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 韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(公式サイト:www.parasite-mv.jp)が1月10日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開となる。韓国映画界でもっとも注目されるポン・ジュノ監督の最新作で、第72回カンヌ国際映画祭では審査員満場一致で最高賞のパルムドールに輝いた。第77回ゴールデングローブ賞でも、監督賞、脚本賞、外国語映画賞の3部門でノミネートされている(授賞式は1月6日予定)

 韓国内では1000万人を超える観客を動員したが、見る人によってこの映画の感想はまったく違っていただろう。なんといっても、韓国特有の露骨な格差や学歴社会、就職難を描き、光と闇を浮き彫りにしているからだ。

 映画のストーリーは単純で、日当たりの悪い“半地下の住宅”で暮らす貧しいキム一家が、ふとしたことで“高台の豪邸”に住む金持ちの家族と出会うところから始まる。

 貧しいキム一家の父親ギテクは完全失業中。長男ギウは大学受験に落ち続けていたが、“高台の豪邸”に暮らすパク家で「家庭教師のアルバイトをしないか?」と友人から持ちかけられる。ギウの妹のギジョンもまた美大に入れず、予備校に通う金すらなかったが、兄に続いて豪邸に足を踏み入れるように――。

 本来、対等な関係であるはずのキム家とパク家の家族だが、そこは“階級社会”の韓国。貧富の差が著しい国で、この相反する2つの家族の出会いは予想もしない物語へと展開していく。

同じ「山」の上に住んでいても富裕層と貧困層とでは全然違う住宅事情

 ギウが家庭教師のアルバイトのため“高台の豪邸”へと向かうシーンは、ソウルの城北洞という街で撮影されている。韓国人女性が言う。

「韓国は今、『富裕層』『中間層』『貧困層』の差がこれまでにないほど激しくなっています。ソウルには富裕層が住む“富村(プチョン)”が何ヶ所かあり、大体が山の上の高いところです。車がないと生活できない場所ですが、そこに建ち並ぶのは運転手付きの高級車を持つ家だから不便は感じません」

 城北洞もまた大豪邸が並んでいる。ギウは徒歩でパク家に向かうが、ここに住む住民だったら車に乗っていたことだろう。

「またその反対で、細くて急な坂道を登るしかない貧困層の街もあります。これは“タルトンネ(月の街)”といって、月に届きそうなほど高くて不便なところを意味します」(前出・韓国人女性)

 つまり、同じ高地帯の山でも富裕層と貧困層の階級が共存しているのだ。

 映画のキム一家は山の上ではなく、どうやら低地帯に住んでいると思われる。“タルトンネ(月の街)”という貧困地帯より便利かと思えばそうでもない。低地帯は大雨による災害を受けやすいというデメリットがある。

 映画では“高台の豪邸”に住むパク一家は富裕層で、低地帯の“半地下住宅”に住むキム一家は貧困層という設定になっている。その高低で貧富の差を強烈に見せているのだ。

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