西武、「大乱闘」「神走塁」「消えた白球」…喜怒哀楽の2019年シーズンを振り返る

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“マジシャン”になった森

 捕手では史上4人目、パ・リーグでは南海時代の野村克也以来54年ぶりに首位打者の快挙を達成し、MVPにも輝いた森が、試合中期せずして“マジシャン”になったのが、9月18日のオリックス戦(メットライフドーム)だ。

 山川のタイムリー二塁打で1点を先制した西武は、先発・ニールも3回まで無失点の好投。これに対し、オリックスは4回、先頭の宗佑磨が初球にセーフティーバントを試みたが、ファウルになった。ところが、打球は捕手・森の目の前でワンバウンドすると、次の瞬間、忽然と消えてしまった。

 笠原昌春球審が訝しげに辺りを見回し、森もキョロキョロ。しかし、ボールはどこにも見当たらない。ややあって、森がプロテクターを動かすと、その下からボールが転がり出てきた。どうやら、ボールはワンバウンドしたあと、プロテクターの脇から中に入り込んでいたようだ。森も笠原球審も思わず笑顔を浮かべたのは、言うまでもない。

 この日の森は4打数無安打と快音が聞かれなかったものの、ニール、小川龍也、國場翼の3投手を好リードで盛り立て、5対0の完封勝利に貢献。チームも優勝マジックを一気に2つ減らし、M6と、マジック尽くしの一日となった。

「パーソル パ・リーグTV」が「試合中に突然手品を…!? L森『消えた白球』」のタイトルで動画を紹介したところ、再生回数10万回を超える人気を博した。

「来年も全力でプレーし、野球界に貢献できたらと思っています」と2020年シーズンに向けて抱負を語った森。チームの12年ぶり日本一奪回は、森の攻守にわたる貢献次第と言っても、けっして過言ではないだろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班

2020年1月5日掲載

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