巨人の若き主砲「岡本和真」は“珍プレー”続出 天然キャラで憎めない不思議
5年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人にあって、打率こそ.265と前年(.309)から大幅に下げたものの、31本塁打、94打点はいずれもチームトップ(打点は坂本勇人とタイ)と2年連続で4番らしい数字をマークした岡本和真。日本シリーズ進出に王手をかけた阪神とのCSファイナルステージ第4戦(東京ドーム)でも、0対1の5回に貴重な中越え同点ソロを放ち、流れを引き寄せるなど、頼れる主砲に成長した。そして、豪快な一発を量産する一方で、天然系キャラとしてチームメートに愛されている岡本は、試合でも時々ご愛嬌とも言うべき珍プレーを演じている。
平成最後の試合となった4月30日の中日戦(東京ドーム)、4番・岡本は1回裏1死一、三塁のチャンスに中前に先制タイムリー。幸先の良いスタートだったが、なおも1死一、二塁のチャンスで、次打者・石川慎吾が左越えのライナー性の打球を放った直後、思わぬ珍プレーが飛び出す。レフト・伊藤康祐の必死のジャンプも及ばず、ボールは左翼フェンスを直撃したあと、伊藤康の前に跳ね返り、グラブにスッポリ収まった。ふつうなら、3連続長短打でチャンスが広がっていてもおかしくないケースである。
ところが、一塁走者の岡本は、村山太朗三塁塁審が「セーフ!」と両手を広げていたにもかかわらず、ダイレクトで捕球されたと勘違い。慌てて二塁ベースを踏んで、一塁に戻ってしまった。この間にボールは伊藤康から素早く二塁に送られ、岡本は二封アウト。石川には左ゴロが記録された。痛恨の走塁ミスを犯した岡本は「天国(先制タイムリー)から地獄に一気に落ちました」とガックリ。きちんと二塁ベースを踏み直して一塁に戻ったのは、ルールに適った行動だったが、ダイレクトではない可能性も考え、二塁手前で様子を見るべきだったかもしれない。
皮肉にも、このボーンヘッドで試合の流れは変わってしまう。直後、巨人は2死一、三塁から陽岱綱が四球を選び、満塁としたが、山本泰寛が三振に倒れ、追加点ならず。結局、この拙攻が祟って、1対3と逆転負けを喫した。
「迷った形でジャッジを仰ごうとすると、ああいう形になる。自分の目、感覚で“捕ってない、捕った”ということを判断するということ(が大事)」と原辰徳監督から訓戒を受けた岡本は、それから2日後、期せずして再び珍プレーの主役となる。
伝統の一戦でも…
元号が令和に変わって2試合目の5月2日の中日戦(同)、巨人打線は左腕・ロメロの前に4回までゲレーロの左中間ソロによる1得点に抑えられるが、5回裏、炭谷銀仁朗の左越えソロで1点差に迫り、反撃モードに入る。
2四球で2死一、二塁のチャンスをつくり、打者は岡本。ロメロの初球、153キロ直球を迷うことなくフルスイングしたが、打ち損じてしまい、打球は高々とレフト上空に上がった。左飛でスリーアウトチェンジ。誰もがそう思い、岡本自身もバットをグラウンドに叩きつけて悔しがった。
ところが、打球はそのままドームの天井を直撃。行方を見失い、まごつく中日守備陣をあざ笑うかのように、ボールはサード・高橋周平とショート・京田陽太の間にポトリと落ちた。この間に二塁走者・増田大輝がホームイン。予想もしない展開で3対3の同点に追いついた(記録は三塁内野安打)。
珍打の恩恵を受けた岡本は「打ち損じ。結果が良かったから、良かった。運が味方してますね」と照れ笑い。原監督も「我々もスリーアウトと思った。目に見えない力を与えていただいた」と驚くばかりだった。そして、この珍打球は、試合の流れも決定的に変えてしまう。次打者・陽岱綱も左中間に勝ち越し3ランを放ち、終わってみれば9対3の大勝。まさに勝利を呼ぶ天井直撃打だった。
若き主砲は伝統の一戦でも珍プレーを披露する。
8月31日の阪神戦(甲子園)、2対2で迎えた6回表、巨人は1死から岡本が西勇輝の初球126キロの外角球を鋭くとらえ、右越え二塁打。ところが、二塁ベースを踏んだ直後、行き過ぎて止まろうとした際に、雨でぬかるんだグラウンドに足を滑らせ、思わず尻餅をついてしまった。最初はあっけにとられた表情で見ていたベンチの原監督も、一拍置いて思わずニヤリ。いかにも岡本らしいプレーに、つい頬が緩んでしまったようだ。
天井直撃打球を何度も打ち上げ、“オデコ直撃三塁打”の珍守備でも知られる松井秀喜や“澤村ポカリ事件”の阿部慎之助のように、近年の巨人の4番打者は、真剣プレーの中にも、どこかユーモラスな部分も併せ持っているイメージが強い。その意味では、岡本も“Gの遺伝子”を受け継いでいるようだ。
日本シリーズ後の宮崎秋季キャンプで、「下半身を意識した」2020年型新打法に取り組んだ岡本だが、来季も豪快な一発と天然パフォーマンスの両方でファンを楽しませてもらいたい。