医者や医療従事者が「ジェネリック薬」を飲まないこれだけの理由
「効果に大きな差がある」
「医師の多くは、本心ではジェネリックを信用していません。私の友人にかぎれば、ジェネリックを使いたいと言っている医師は一人もいません」
と話すのは、『医者はジェネリックを飲まない』の著書がある内科医の志賀貢氏で、こう続ける。
「厚労省が、18年度の9月診療分の医療費から、企業が加入する3517の保険組合のジェネリックの使用率を明らかにしたデータがあります。全国平均は72・5%でしたが、『日経メディカル』がさらに分析したところ、医師国保にかぎると58・2%でした。つまり医師や医療従事者、その家族らのジェネリック使用率は、全国平均よりはるかに低いのです。理由は、薬効や安全性に関する納得できるレベルのエビデンスがないからです。厚労省や製薬会社は“先行薬と同じだ”と言いますが、たとえ原薬は同じでも、製剤方法や添加物は異なります。また、どう製剤されているのか、それが適正なのか、確認されていないので、信用できないのも当然です」
もっとも、志賀氏はジェネリックを目の敵にしているのではない。
「医療費の高騰は大きな問題で、よいジェネリックは進んで使うべきです。しかし臨床の現場では、苦しんでいる患者さんを前にしたとき、どうしても信頼できる薬に手が伸びます。昨年10月から、医療費がタダになる生活保護受給者には、原則としてジェネリックを調剤することが義務づけられました。でも、“この患者は生活保護を受けているからジェネリックにしよう”とは思わないですよ」
むろん、「思わない」のは臨床の現場での経験にもとづいてのことだという。
「使ってみれば、効きの違いがわかるものです。たとえば、危篤状態に陥った患者さんに点滴するドパミン塩酸塩。危篤状態とは、様々な体液が循環不全となり、ショックを引き起こし、容体が悪化すること。そのような緊急時に血圧を安定させ、心不全を改善し、利尿作用を促し、体液の循環をよくする緊急薬の定番です。これがブランド品とジェネリックとで効果に大きな差があるのです。看護師だって“ジェネリックのほうは効果が半分かな”と言っています。ブランド品なら、1分間の点滴滴散が10滴で効くのに、ジェネリックだと15滴でも、20滴でも、そのレベルに至らないことがある。結果が血圧や心拍数として、数字にはっきり出ます。ブランド品は値段が4倍もし、使いすぎると病院経営を圧迫するし、役所からも目をつけられます。それでも自腹を切って使うこともありますよ」
ただし、効果が異なる理由はわからないという。そういう前提で、ほかに先行薬のほうが効いた薬の製品名を挙げてもらった。
「循環薬ノルアドレナリン、副腎皮質ホルモンのヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム、止血剤シメチジン、呼吸不全治療薬ジモルホラミンなど、緊急薬として使うものが多い」
前出の秋津医師も、
「ジェネリック全体でみれば、レベルは相当上がっています」
と言いつつ、こう語る。
「高血圧の患者さんに処方する血管拡張剤のニフェジピン。時間をかけて体内で溶ける徐放(じょほう)性製剤でLとCRがあり、Lは12時間、CRは24時間かけて徐々に効いていきます。これをジェネリックに替え、“ドキドキする”“顔が赤くなる”と訴えてきた患者さんがいました。また、ぜんそくの患者さんに処方する気管支拡張剤のツロブテロールテープ。皮膚に貼る経皮吸収型製剤で、1日かけて徐々に効くように調整されていますが、ジェネリックによってはこの機能に差があるので、薬が速く吸収されすぎたのでしょう。手の震えや動悸が生じたという声がありました。気管支拡張剤は、量を増やせば手の震えや動悸が生じるのです」
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