広島、4連覇どころかBクラス転落…2019年の“悪夢”を振り返る!
チームの精神的支柱だった新井貴浩が引退、打線のキーマン・丸佳浩が巨人にFA移籍とV3に貢献した両主力が抜けた2019年の広島。それでも開幕前は、落合博満氏、里崎智也氏、大島康徳氏らが1位予想し、多少苦戦はしても、4連覇は濃厚という見方が強かった。ところが、いざ蓋を開けてみれば、4月前半に5連敗を喫するなど、予想外の低空飛行にあえぐ。“鯉の季節”5月に盛り返したのもつかの間、6月の交流戦では12球団中最下位の5勝12敗1分と大きく負け越し。7月後半に9連勝と復調気配も、9月にバティスタをドーピング違反で欠くアクシデントで三たび失速。4年ぶりのBクラス(4位)に沈んだ。
歯車のかみ合わないチームを最も象徴していた試合が、4月10日のヤクルト戦(マツダスタジアム)だった。3対3の同点で迎えた延長10回表無死一塁、荒木貴裕の一、二塁間のゴロを松山竜平が二塁へ悪送球したのが発端だった。
1死満塁とピンチを広げたあと、山田哲人の併殺コースの二ゴロを、名手・菊池涼介がバウンドを合わせ損ない、まさかのファンブル。1点を勝ち越された。直後、3連続タイムリーで5点差に広げられ、なおも1死二、三塁で、代打・大引啓次の二ゴロを菊池涼が本塁悪送球。ここから3長短打でさらに6点を失い、3対15と大敗。延長イニングでの12失点は、1996年の横浜の「11」を更新するプロ野球ワースト記録で、12失点もしたのに自責点ゼロという珍事のオマケ付きだった。目を覆うばかりの惨敗にスタンドのファンが涙ぐむ光景も見られた。
V2を達成した2017年には、本拠地・マツダスタジアムで48勝20敗1分、特に土日には20勝5敗と絶対的な強みを誇った広島も、2019年はこの日の大敗も含めホームで39勝31敗1分と地元の利を生かせなかった。
チームの状態が良くないときは、運からも見離される。
5月4日の巨人戦(マツダスタジアム)、広島は0対0の1回裏1死から菊池涼がショートへ強い当たりのライナーを放つ。坂本勇人がはじいてゴロで捕球したあと、素早く一塁に送球したが、送球が高く浮き、中島宏之がジャンプして捕球した際に足がベースを離れたことから、一度はセーフになった。
ところが、菊池涼は、前に立ちふさがった中島との交錯を避けようとフェアラインの内側を滑り込むようにして駆け抜けた際に勢い余って転倒してしまう。慌てて起き上がり、一塁にヘッドスライディングしたが、中島のタッチのほうが早く、橘高淳一塁塁審の判定はアウト。
打者走者が一塁を駆け抜けた際にオーバーランしても、直ちに帰塁すれば、アウトにはならない。接触プレーを避けようとした状況から判断して、菊池涼に二塁進塁の意思がなかったことは明らかだが、橘高塁審は「二塁に向かう姿勢を見せたと判断した」と説明した。
直後、緒方孝市監督が抗議し、リプレー検証が行われたが、打者走者の二塁進塁の意思の有無は「リクエスト対象外」として協議されなかったため、検証後の判定もアウトだった。
「リクエストしたら、プレー自体を確認してもらえるものだと思った」という緒方監督は納得できず、再びベンチを出て抗議したが、リクエストによる決定に対して異議を唱えたとされ、退場が宣告された。監督がリクエストによる決定に抗議し、退場になるのは初の珍事。令和初の退場劇でもあった。
だが、試合開始からわずか15分で指揮官が不在になる緊急事態が、開幕以来、持てる力を発揮できずにいたナインを目覚めさせる。2対2の延長10回裏、バティスタの左前タイムリーでサヨナラ勝ち。この劇的勝利を境に一枚岩になったチームは、5月を20勝4敗1分と球団記録を2勝更新する快進撃をはたし、2位・阪神に4ゲーム差の首位。このまま独走態勢を固めるかに見えたが、6月の交流戦でさらなる悪夢が待っていた。
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